2015.09.12 [ 歴史・祭・暮らし ]
竹細工の箍(たが)に 【井月さんのこころ131】
なお、高木俊輔先生がまとめてくださった「幕末・明治期年表」によれば、文豪 藤村の父・島崎正樹(「夜明け前」主人公・青山半蔵)は、天保2年(1831年)に木曽馬籠宿の庄屋・問屋に生まれたとのことですから、井月さんよりは9歳年下ということになります。亡くなったのは、井月さんより4か月早く、明治19年11月没56歳でした。
井月劇場 朗読劇 「風狂のうたびと」 の公演も感動的でした。
春日愚良子先生が、井月さんの生き様や句と生きた時代や伊那谷の風土とのかかわりを朗読劇に仕立てた、いわばコラージュ(構成舞台)で、平成11年に長野県伊那文化会館での初演以降、平成20年松本文化会館、平成21年いなっせホールでも上演されてきたとのことです。
今回は、朗読を公募による伊那郡市民7名が、劇を伊那市美篶小学校の児童9名が担当し、音楽を田中眞郎先生が書き下ろし、伊那混声合唱団や篠笛・オカリナサークルなど多くの市民の皆さんの協力により練習を重ね、阿部裕吉先生の演出で上演に漕ぎ着けたとのことです。午後7時の開演からおよそ100分、時間の経つのも忘れる、すばらしい公演でした。
秋口に井月さんが詠んでいます。
初秋や往来端の竹細工 井月
以下、この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、
竹細工にもいろいろあるが、桶屋は板の胴に竹の輪のたがをはめて締め付ける。たがは竹を薄く削り巻き付けて作る。道を歩いているとその前に、細長く削った竹がくるくる動きながら伸びてくる。見ると奥の方でおっさんが竹を削っている。昔はよく見かけた。
秋になって仕事もはかどる。漬物用にぼつぼつ注文も舞い込む。
(初秋・秋)
桶や樽の周囲に巻いて板材が外れてばらばらにならないように締める箍(たが)ですが、「箍(たが)が外れる(抑制が効かなくなるさま)」や「箍(たが)が緩む(組織などの規律がゆるむさま)」などのようにも使われます。
藩政を改革し幕末の長岡藩を纏めた河井継之助は、井月さんより5歳年少でありましたが、長岡藩にとっては箍(たが)のような働きをした幕末の風雲児でした。
河井継之助は、古びた秩序を一掃し、藩士の禄高是正などにより藩の組織・財政改革を断行しました。教育改革や兵制改革も当時、画期的なものであったようですが、目指した『武装中立』を守れず、ついには奥羽列藩同盟に加わり新政府軍と戦わざるを得なくなってしまい、敗走先の会津で慶応4年夏、42歳で没しました。 河井継之助記念館HP
熾烈を極めた北越戦争で長岡は壊滅してしまい、明治5年の壬申戸籍の施行で井月さんも戸籍を取りに長岡へ戻ろうとしますが、善光寺辺りで引き返してきてしまったようです。理由はわかりませんが、帰り辛かったのでしょう。
露くさ結ぶ未だ夜明け前 朴翆
夜は明けてたしかにぽろり玉の露 青巒
今週の結びは、愚良子先生のこの句です。
「春日愚良子句集」から
鵜頭のたしかにごつんと音したり 愚良子
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