2015.08.22 [ 食・農・旅 ]
上燗の酒に 【井月さんのこころ128】
井月さんを世に紹介した下島空谷(勲)さんが『乞食井月と夏』に次のように書いています。
酒は彼が唯一の嗜好でした。酒をよく飲むあの頃の信州殊に伊那地方では、彼に飲ませる酒を吝(おし)むようなことはなかったのです。これは何といっても彼の徳に帰すべきことがらで、私はこれを天の美禄といっていますが、実際彼が上伊那の土となったのもこの美禄ありしがためではないかと思います。私自身としては余り酒を好みませんが、若し井月に酒というものがなかったとしましたら、非常に物足らない寂漠を感ずることであろうと思われます。
さて、暑い夏に燗酒を出された井月さんが詠んでいます。
上燗の酒しひらるる暑さかな 井月
以下、この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、
上燗は熱燗と同じ。うだるような暑い夏、酒を強いて勧められて、この熱燗ではと。いつでも酒とくれば、喜ぶと思ったら。困惑することもあるんだ、井月も。冷たいビールを飲ませてやりたかったね。千両千両と喜ぶ顔を見たかったね。四千年の歴史を持つというビールも、日本で工業生産を始めたのは明治五年ころ、井月はビールを飲む機会はなかったであろう。
(暑さ・夏)
季節は秋へ。酒好きの井月さん、残暑の中で次のようにも詠んでいます。
きゝ酒の心もとなき残暑かな 井月
(残暑・秋)
「信州の地酒振興条例」(仮称)の制定を目指す長野県議会議員連盟(服部宏昭会長)の検討調査会は、17日(月)条例要綱の会長案を審議したと報道がありました。来る9月定例会中に全58名の議員が参加する議員連盟総会で条例要綱案を決定し、県民意見を募集した上で、11月定例会へ条例案を議員提案する予定とのことです。個性豊かな魅力にあふれた貴重な地域資源である地酒の普及と振興が図られることを大いに期待したいと思います。
夏の全国高校野球大会は、20日(木)決勝戦が行われ、東海大相模高校(神奈川)が6-6で迎えた9回表、エース小笠原自らの決勝ホームランで仙台育英高校(宮城)を突き放し、45年ぶりの優勝を飾りました。
玉の汗 勝ちしエースの背番号 青巒
10-6で球児の夏が去りにけり 青巒
今週の結びは、愚良子先生のこの句です。
「春日愚良子句集」から
古着屋の長いジーンズ夏果てる 愚良子
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