2011.02.10 [コラム]
Vol123■総力特集! よみがえった幻の酒米「金紋錦」
冬の寒さが厳しいこの時期、信州の各地で「雪中酒」が仕込まれます。およそ3~4ヶ月間、深い雪の中に寝かせてじっくりと低温熟成する雪中酒は、味がまろやかだと評判です。熟成の終るのが今から待ち遠しいですね。
さて、日本酒の原材料といえば「お米」ですが、普段わたしたちが食べている普通のお米とは違う品種で、「酒造好適米」(いわゆる酒米:さかまい)と呼ばれるものだということをご存知でしたか?
雪の中は温度が低い状態で安定しているため、低温熟成に非常に適している。
酒造好適米は、食用米に比べて一般に米粒が大きく、その中心部にはデンプンでできた「心白(しんぱく)」という部分があるんです。お酒造りでは、精米する際に、できるだけ雑味をなくすために心白のまわりの部分をより多めに削り落として使うんですよ。食用米のように粒が小さいと、ちょっと深く精米するとすぐ砕けてしまうんですって。
酒造好適米としては、全国的には「山田錦」が一番メジャーなんですが、「たかね錦」「美山(みやま)錦」「ひとごこち」など、長野県で生まれて全国へ広まっていった品種もあるんですよ。
写真は両方とも「美山錦」
そんな長野県生まれの酒造好適米の中で、“幻の米”として注目を集めているのが「金紋(きんもん)錦」。金紋錦はたかね錦と山田錦を交配させた品種で、長野県の北部にある「木島平(きじまだいら)村」でしか栽培されていない稀少品種なんですよ。地元のJAや農家が「村外には出さずに村特産とする」と決めているんだそうです。
実はこの金紋錦、昭和31年に開発されてから県内各地の酒蔵で使われていましたが、栽培が難しかったり当時の技術では精米も難しかったりと、何かと扱いにくい米だったそうです。その後、美山錦やひとごこちなど栽培しやすく質のよい品種が新たに開発されると、次第に使われなくなり、長野県で生まれた酒米でありながら、ついには栽培するのは木島平村だけ、酒米として使用するのは石川県のたった一つの酒蔵だけとなってしまったのでした。
澄んだ空気と厳しい寒気、豊富で清冽な清水が湧出する、自然豊かな信州。
酒の醸造には絶好の条件。
時は過ぎ、今から数年前。「地元の米で個性あるいい酒を造りたい」と、木島平村の隣にある飯山市の酒蔵が金紋錦に注目しました。
県内でまったく使用されなくなってから、木島平村では、金紋錦の栽培技術の改良や品質向上に石川県の酒蔵が積極的に関わり、収穫した全量を一手に買い付けていました。ですから、その酒蔵の金紋錦に対する思い入れには並みならぬものがあったことでしょう。
飯山の酒蔵は金紋錦を分けてもらうよう何度も何度もお願いし、やっと平成16年、再び金紋錦を使えるようになったんです。そして、今では県内7つの酒蔵で使用されるようになり、まさに信州の“幻の酒米”が復活したのです!
ところで金紋錦の味の特徴は?
ズバリ、それは複雑な香りと旨み。この“複雑さ”は世界最高級と呼ばれるお酒に共通する特徴で、品を感じさせる味わいの条件とも言えるんです。
金紋錦から醸造したお酒を口に含むと、その複雑さが口の中にぱぁっと散らばるんですが、次の瞬間にしっかりとまとまる、そんな感覚を味わうことができますよ。
これからも復活を遂げた金紋錦のお酒に注目です!
数々の高品質な酒造好適米を生み出した実績のある長野県農業試験場では、今も酒蔵と協力して新品種の酒米の開発が行われているそうです。これからも信州の日本酒に、乞うご期待!
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☆信州の日本酒についてはこちらもどうぞ。 週刊信州VOL.23特集(パソコン・携帯兼用)
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