2015.10.07 [株式会社ヤマレコ 代表取締役 的場一峰さん]
山×プログラマー vol.1
山に登る人にとってはお馴染みともいえる、山に関わる人たちのコミュニティサイト「ヤマレコ」。
登山記録をはじめ、計画を立てたり、掲示板で交流したりと「山に行きたい!」という人にとって何かと頼りになるサイトです。
掲載している登山の記録は何と63万件以上!いかにも登山、という有名な山だけではなく、ハイキングで行くような山の情報もあるところがすごい。近くの山を検索しても、きっと記録が出て来るはずです。(ちなみに松本市内の桜の名所としても知られる「弘法山古墳」も、検索すると出てきました。標高は650mなので、山よりも丘のイメージですね。)
その「ヤマレコ」を立ち上げ、運営しているのが的場一峰さん。開発から管理まで、ほぼ一人でやっているんですから、驚きです。
人の生活を変えていく。それが面白いと思った
- 「ヤマレコ」を始めたきっかけは何だったんですか?
そのころは神奈川に住んでいて、「カモの会」という社会人山岳会に入っていました。そこで会報を作っていて。会員がいて、写真と文章を集めて、冊子にして…って、手作業で全部やっていると大変で。「じゃあ、各自で登録できるといいよね」って、会員用のサイトを作ったんです。
- 最初は会員専用サイトだったんですね。
「カモレコ」って名前だったんですが、それがそのまま「ヤマレコ」になったわけではなくて、「ヤマレコ」はコンセプトは引き継ぎつつ、ゼロから作りました。会員以外の人も使ってくれたら面白いなーって思って。でも、実際作っても誰も使ってくれなくて(苦笑)。
- せっかく作ったのに…。
山岳会の人は使い慣れた「カモレコ」の方を使っちゃうんですよね。(会員数のグラフを見ながら)立ち上げたのが2005年なんですが、最初は2人でしょ?これ、私と妻なんですよ(苦笑)。
-今は会員も10万人を越えてますけど、どうやって増やしていったんですか?
まず、「カモの会」の人たちには、「こっちを使って」とお願いして、データを移行して「カモレコ」は閉じました。妻が入っていた別の山岳会の方にも声をかけてもらって。でも1年経って、やっと200人くらいだったかな…。1万人越えたのが2010年だったと思います。
- ということは、ここ数年で急に増えてきたんですね。
皆さんの口コミのおかげですね。もともと自分一人で始めたことで、広告にお金をかけることもできなかったので。会員が増えて、登録するデータが増えると、ネットで検索したときに上位に出てくるようになる。すると目に止まる機会が増えて、会員が増えて…という感じです。
- 的場さんはずっと、働きながら「ヤマレコ」もやっていたんですよね?
ずっと東京で会社員として働きながら、平日夜や休日を利用して一人でコツコツと続けてきました。2004年に結婚して、それから子どもが産まれて。あまり山にも行けなくなってしまったので、家で何かできることをやろうかなと思って、プログラミングを始めてみたんです。
- えっ?仕事がプログラマーだったわけではないんですか?
仕事は研究職。ネットワークの研究をして論文を書いていました。論文用にデータを集めるために、ちょっと書いていたくらいで。
- じゃあ、ほとんど独学で?
最初は本当に趣味という感じで、やったりやらなかったり…結構、波があったかなあ。やるときはやるけど、飽きたら3カ月ほど放置、みたいな。
- それで、1年くらいで「ヤマレコ」を作り上げた。すごいですね…。
自分の思いついたことが形になっていくことが楽しくて。「こういう機能もあったらいいな」と思ったら、どんどん作っていく感じでした。最初のうちは自分の気分次第なところもありましたが、人が集まってくるとそうも言ってられないし。
- でも、言ってみれば趣味で始めたようなものですよね。何かモチベーションがないと、続かない気がするんですけど…。
そうですね…それは、「ヤマレコ」を使うことで人の行動、もう少し大きく言えば人の生活が変わるということが面白いと感じるようになったんだと思います。
- 「ヤマレコ」が、生活を変える?
昔は、山へ行って帰ってきて、まめな人はノートに山行記録を書いて、周りの人に見てもらうくらいだったのが、帰ってきて記録してネット上にアップするようになるとか、山に行く前に検索するとか。あとは、検索サイトに山の名前を入れて調べていたのが、「ヤマレコ」に来て、検索するようになるとか。山へ行って帰ってきて、次にまた山に行くまでの行動が「ヤマレコ」があることで変わってくる。そういうところが面白くて、モチベーションになったのかなと思います。
サラリーマンとして仕事をしながら「ヤマレコ」を続けていた的場さん。2013年、ついに独立して株式会社ヤマレコを創業。さらにその翌年には家族で松本に移住します。仕事を辞めて会社を立ち上げ地方に移住…そのためにはかなりの行動力や決断力が必要なはず。穏やかな笑顔で話す的場さんの心の奥には、秘めた情熱があるのでしょうか…さらに話は続きます。
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