八ヶ岳の火山列は夏沢峠を境にして大きく北部と南部に分かれます。北部は蓼科山や縞枯山のようにやさしげな山々が多く、南部は赤岳や権現岳のようにゴツゴツの岩山が多いという違いがあります。南部に険しい岩稜が多いのは、噴火活動が終わってから長い時間が経って、深い侵食を受けて火山体の骨の部分が表面に出ているからです。北部も火山としての歴史は古いのですが、新らしい時代の噴出物に覆われているところも多く、火山体の内部はあまり見えていません。そんな中で、北八ヶ岳の横岳(北横岳:標高2480m)の近くに、坪庭と呼ばれる変わった場所があります。ここは標高2200~2300mほどのところにあるでこぼこな平坦地で、ゴツゴツとした溶岩が特徴的でツゴツの岩があるから南八ヶ岳のように火山活動が古いのかというと、じつは全く逆です。あまりに新しい溶岩なので、風化や表土のたい積がほとんどないため、流出した溶岩がむきだしになっているのです。この溶岩の噴出年代ははっきりとはわかっていませんが、おそらく1000年前よりも新しいと考えられています。亜高山帯程度の標高にあるにもかかわらず、シラビソなどの樹林がなく、高山帯に見られるようなハイマツや高山植物が生えていて、「坪庭」と呼ばれる理由がよくわかります。土壌に乏しい非常に新しい溶岩の存在に、きびしい気候条件が加わって、特異な景観が生まれたと考えられます。山麓からロープウェイが延びているので、登山者でなくても気軽に散策ができる場所になっています。
これだけ新しい溶岩があるということは、横岳はれっきとした活火山であることを意味します。もちろん火山にはそれぞれにくせや違いがあるので、活火山だjからといってむやみに怖がる必要はありません。自然の力や不思議を感じる魅力的な場所であるとともに、将来噴火を起こす可能性をもつ特別な場所であるということを頭に置いて、賢くつきあうことが大事です。
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