2025.04.15 [ 計量検定所 ]
計量女子の計量検定所日記「可搬式の光格子時計が発売されました」
こんにちは!計量女子です。
令和7年度最初のブログは、計量女子が個人的に驚愕したとある「時計」の発売開始についてです。
世界初、小型化に成功した光格子時計を発売開始
次世代の時間計測技術の実用化へ(島津製作所)
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世界初の商用機として販売されることとなった可搬式光格子時計。
商品名を「ストロンチウム光格子時計『Aether clock OC 020』」(通称:イーサクロック)といいます。
外観はちょっと大きめのアンプセットみたいですが、れっきとした時計です。
仕組みとしては特殊なレーザーで作った入れ物(光格子)にストロンチウム原子を閉じ込めて原子の振動を数えるというもので、時計としての3要素(振動子、カウンター、基準)に当てはめると次のとおりです。
振動子=レーザー
カウンター=光周波数計測システム
基準=ストロンチウム原子の遷移周波数
イーサクロックの特徴として、なんといっても小型化に成功したことが挙げられます。
今までの光格子時計は部屋全体が時計(というかほぼ装置)なので使用は部屋の中だけに限られ、よそへ持って行くといったことはできませんでした。
※産総研のイッテルビウム光格子時計。「部屋中が全部時計」といっても過言ではありません
イーサクロックは装置体積を250ℓ(リットル)まで小型化することに成功したため、部屋から持ち出してどこの場所でも研究に使うことができます。
もうひとつの大きな特徴としては、現在の「秒」の定義基準であるセシウム原子時計に比べてはるかに高い精度を誇ることです。
セシウム原子時計の精度は1秒の10-15、数千万年に1秒の誤差しか生じない程度ですが、イーサクロックの精度は1秒の10-18、100億年に1秒の誤差しか生じないということになります。
身近(?)な例で例えると、広隆寺の半跏思惟像でおなじみの弥勒菩薩が遥か未来(具体的には56億7,000万年後)に出現した頃ようやく0.5秒の誤差が生じているかな?…というような途方もない精度です。
これだけの精度を持つ光格子時計であれば、かのアインシュタインが提唱した「重力は空間と時間を歪める」という一般相対性理論の実験に使うことができるそうです。
例えば、地球上の複数の場所にイーサクロックを持って行き、高低差により生じる時間の流れの違いを観測して地震や火山の予知に役立てる技術に応用される、といったようなことが将来期待されています。
地震や火山の被害が多い日本では早く実用化してほしいですね。
笑顔ある暮らしのために くまなく計量
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