2012.11.20 [ 食・農・旅 ]
絹織製作研究所のご紹介
農業改良普及センターのHです。
上伊那地域も、かつては製糸業・養蚕を中心に栄えた地域であり、現在もまだ6戸の農家が蚕を飼育しています。
そんな中で、桑を育て蚕を飼育するだけでなく、自分たちで糸にし、糸を染色し、染色した糸で機を織り、さらには次に飼育する蚕の卵まで自分たちで育てている、全国的にも珍しい「勝山織物絹織製作研究所」をご紹介します。
絹織製作研究所は、平成14年に、飯島町の元保育所などの施設を借り、男性1名、女性2名でスタートしました。
代表の志村さんに伺ったところ、蚕の飼育~絹織物の生産に、気候的に最も適した場所を探したところ、伊那谷の飯島町にたどり着いたのだそうです。
使っている桑は「鼠返」という品種で、上伊那ではほとんど残っていなかったため、新植により桑園を造成しました。実験した結果、この鼠返で飼育した蚕が、自分たちが使いたい細くて強い糸の生産に最も適していたとのことです。
使用する桑は、化学肥料を使わず、さらに最上部の柔らかい葉のみを収穫します。全部の葉を使う通常の飼育に比べ、ずいぶん贅沢な使い方をしています。
飼育している蚕は、主に「三眠蚕」という蚕で、農家が一般に飼育している蚕より脱皮回数が一回少なく、小さなうちに繭を作るため、細い糸が取れるのが特徴です。
プラスチック製のまぶし
上ぞく(十分に成長した蚕を専用の枠に移動させ、繭を作らせる作業)して繭を作らせる装置も、通常のダンボール製の器具ではサイズが大き過ぎて適さないため、プラスチック製のまぶし(蚕が繭を作るときの足場となるもの)を使っています。収繭機にかからないため、昔ながらの方法で手で繭かきをして収繭(専用の枠から繭を取り出す作業)します。そして、収穫した繭は出荷せず、自分のところで一週間塩蔵します。加熱乾燥させないところも、糸質にこだわるためです。
収穫された三眠蚕の繭は、通常の繭の約半分の大きさ
繭から糸を引くのも、小型の単純な道具を使った手作業によるところが多く、機械で効率的に引くのではなく、丁寧に時間をかけて引きます。
繰糸に使用する器械
数本の糸を一本に合わせます
1本に合わせた糸に、撚りをかけます
ひいた糸は、張力を調整しながら、大枠に巻き取ります。
大枠に巻き取る機械
こうやって機織り機に使用できる糸が出来上がります。
一見とても細い糸ですが、切れにくい強い糸なのだそうです。
また、通常の絹糸は出来上がりの断面が丸くなるように繰糸しますが、絹織研究所の糸の断面は平べったい楕円形に仕上がっているのが特徴です。
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