2013.12.07 [ 食・農・旅 ]
初時雨の頃【井月さんのこころ38】
井月さんのこころ シリーズ その38
師走に入りました。
里には時雨、山には雪が降る季節です。
井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から、井月さんが詠んだこの季節の二つの句の評釈を引用させていただくと・・・、
売に来る薄塩物や初しぐれ 井月
秋には、鯖鯵鰯秋刀魚等が寒流に乗って日本に近づくので大漁で安価。脂が乗って美味。鮭も鰤も年取り用に。冷凍庫のない時代、塩魚だが、寒くなると行商も薄塩に。その方が味はよい。
よく行商が里々を回る。時雨がちの庭先で取引。「つみ込みし俵に暖きしぐれかな 井月」の句碑が、東伊那、湯澤梅次郎氏庭にできた。
(初時雨・冬)
山までは幾度も来て雪おそし 井月
朝起きてみると、遠くの山に新雪が。ゆうべはしんから寒かったが。こんな繰り返しで里山までも雪が来た。今度は里にも降るか。
信州は山国だが、伊那は、西に中央アルプス、東遙かに南アルプス連峰、そして間近に伊那山地が。その山々にかかる雲や雪で、天候を予知し、雪形は種蒔き時期を教えたり。生活への山の関与は密接だ。
(雪・冬)
鯖(さば)鯵(あじ)鰯(いわし)秋刀魚(さんま)鮭(さけ)鰤(ぶり)
子供の頃には、まだ行商が干物や塩引きの魚などを売りに回っていたように記憶しています。近頃のように鮮魚をふんだんには食べられなかった懐かしい時代のことですね。
写真: 初冬の中央アルプス(伊那市春日街道沿いから、駒ケ岳(中央)将棋頭山(右))
さて、先週29日(金)から1日(日)にかけて2泊3日で東北地方を視察してきました。
目指した先は、岩手県大船渡農林振興センター。東日本大震災による津波被災地の復旧・復興支援に携わっている最前線です。
全国10道府県から派遣されている常時23名が、大船渡と宮古の2つのセンターで岩手県職員を応援しながら農地・農業用施設災害復旧対策事業に取り組んでいます。
長野県からは、当所のT主査をはじめ4名が大船渡センターで復興支援に当たっています。
彼らの任期は本年度1年間で、残り4か月。これから厳しい冬が待っています。
T主査の住んでいるセンター近くの仮設公舎にも激励品を届けにお邪魔しました。間取りは1DKで一応の空調や電化製品が設置されており、少し安心しました。
翌30日(土)大船渡市三陸町吉浜の現場を案内していただきました。
ここは、明治三陸地震(1896年)における死者・行方不明者204人などの教訓を基に1,500人の住民が高台移転を済ませていたために、今回の津波で失われた人命は1名のみであった「奇跡の吉浜地区」なのです。
今回の被災前に旧住宅地であった農地や美しい砂浜が広がっていた海水浴場は大津波に洗われてしまい、列島全体の地盤沈下の影響もあって海岸線が大きく後退してしまったとのことです。
この浜で、現在、T主査が担当している復興基盤総合整備事業により46haの圃場整備(事業費1,636百万円)が進められており、隣接の海岸線では、農地保全のための堤防(L=594m、H=7.15m)や離岸堤など(事業費3,711百万円)が、同じく長野県のK係長が担当して行なわれています。
三陸道の建設工事現場などからの残土を運び込むダンプカーがひっきりなしに入ってきて、埋め立てが行なわれていました。
その傍らの吉浜川には鮭が遡上してきていました。
写真:基盤整備工事
写真:護岸工事
写真:吉浜川の鮭遡上
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