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目立つことはありませんが、国土の利用・保全に貢献している地籍調査(ちせきちょうさ)を紹介します。

※イラストは、国土交通省「地籍調査はなぜ必要か」から引用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

農地整備課では、水田や畑に水をとどけるための用水路の整備や農地を使いやすくするための区画整理・区画拡大、農地を保全するための施設の整備など、農業農村整備事業(土地改良事業)に関わる業務を主に担当していますが、それ以外に、地籍調査事業と呼ばれる事業も担当しています。県内で実際に地籍調査事業を行っているのは、市町村ですが、県では、国土調査法により、地籍調査の成果の認証という手続を行うほか、国土交通省から交付される補助金の交付事務などを行っています。
普段耳にしない言葉かもしれませんが、地籍とは、「土地に関する“戸籍”」みたいなもので、一筆(土地の単位で、土地登記簿における一個の土地)ごとの地番・地目・所有者・境界・面積といった、土地に関する情報のことをいいます。地籍調査は、「地籍を明確化」するための調査のことで、対象となる地域は、全国土から国有林野と公有水面などを除いた地域と決められていて、成果の品質を確保するため、国土調査法と地籍調査・測量に関する各種の規程・基準類に基づき実施しています。
地籍調査で作成される成果である地籍図(土地の区画、地番を記載した図面)と地籍簿(土地一筆ごと、地番・地目・所有者・面積を記載した簿冊)は、県の認証(※あらかじめ国土交通省による審査、承認が必要です。)を経て法務局(登記所)へ写しが送付され、地籍図は地図として備え付けられ、地籍簿の内容で土地登記簿が更新されます。

地籍調査の成果として地籍図が法務局に備えられている場合の図面の例(不動産登記法第14条第1項地図などと呼んでいます。)

地籍調査が行われていない場合、法務局には、主に旧土地台帳付属地図が備えられています。(いわゆる公図)

現在は、データが電子化されているので閉鎖されていますが、紙公図(旧土地台帳付属地図)の例です。(国土交通省「地籍調査はなぜ必要か」からの引用)

「国土の利用・保全に貢献している地籍調査」と表題を書きましたが、地籍調査の効用としては、境界や面積などの土地に関する情報が正確なものになり、その情報をベースに土地の境界を現地に復元できることが大きいと言えます。これにより、土地取引の円滑化を始め、災害が発生した際のすみやかな復旧・復興、まちづくりの効率的な実施に貢献できます。

例えば、平成23年3月に発生した東日本大震災で、東北地方の太平洋側沿岸一体で地震と津波の影響により甚大な被害が発生し、地形も大きく変わってしまったところもありましたが、東北地方は全国的にも地籍調査が進んでいて、復旧に先立ち必要となる土地の確定、つまり、境界の復元が速やかに行うことができたのです。

東日本大震災の被害から復旧・復興した岩手県大船渡市内の様子(令和4年9月撮影) ※岩手県大船渡市の地籍調査の進捗率は100パーセントです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長野県は海がないので、津波の被害はないかもしれませんが、中山間地域を多く抱えていますので、「山津波」と呼ばれる土石流の発生、令和元年10月、千曲川の氾濫を引き起こし、多くの土地が浸水被害を受けた、台風19号災害など、地形を大きく変えてしまうような大災害が発生する恐れは十分にあるので、地籍調査の必要性は十分に理解いただけると思います。
一方、少し古いですが、土地開発において、地籍調査が行われていれば、もっとスムーズに進んだといわれる事例として、東京にある六本木ヒルズがあります。

六本木ヒルズの場合、約400筆の境界確定に4年もの月日を要しています。都市部では、例えば、公図(いわゆる旧土地台帳附属地図)と住宅地図を見比べて、現地の位置関係が著しく異なっていることや、関係者が多くいることから、農村に比べて、境界調査が困難を極めることが多いのです。

地籍調査の中で、境界については、土地一筆ごと境界の調査(一筆地調査)により確定した筆界点(境界点)を「地上法」という測量方法で測量を行います。

地上法とは、国土地理院が設置した三角点などの座標値のわかる点を基準点として、調査区域に地籍図根点(ちせきずこんてん)と細部図根点(さいぶずこんてん)という新しい基準点を設置し、そこから土地の境界点を測量するものです。基準点等を基に、筆界点を測量し、正確な座標値を求める測量のため、位置成果の現地復元性が確保されます。(かなり省略した説明ですみません。)
現在は、地籍図根点の設置がより効率的に行える人工衛星を利用した衛星測位システムによるGNSS測量も行われています。(GNSSは、Global Navigation Satellite Systemの略で、様々な国で衛星測位システムが運用されていることからこの名が付けられています。)

電子基準点の写真です。国家基準点として、全国に約1300あり、約25キロメートル間隔で配置されています。各種測量の基準となり、衛星からの電波を24時間受信し、国土地理院へ観測データを送信しています。

気づかないかもしれませんが、地籍調査が行われた地域には、国土調査基準点と書かれた金属鋲が地面に設置されています。これは、土地の境界を測量するために地籍調査で設置した基準点(細部図根点)です。(※大事な基準点ですので、亡失させないようにしてください。特に雪の多い地域は、除雪の際に紛失してしまうことがありますので、注意してください。)

土地の境界には、所有者等の確認のうえ、境界杭が設置されます。杭(境界点)は、左のような細部図根点を基準として測量が行われ、地籍図が作成されます。(※大事な杭ですので、亡失させないようにしてください。特に雪の多い地域は、除雪の際に紛失してしまうことがありますので、注意してください。)

地籍調査の必要性について述べてみましたが、地籍調査がどのくらい進んでいるのかというと、調査開始からすでに約75年が経過したところですが、令和5年末時点で全国では53%、長野県では39%、北アルプス地域では19%という状況です。つまり、全国だと、法務局(登記所)にある図面の約半分は未だに土地台帳附属地図のままということになり、調査が完了するまで、少なくとも同じくらいの年数がかかりそうです。
このため、地籍調査の効果を発揮させ、より効率的に調査を進めるため、防災対策、社会資本整備、まちづくり、所有者不明土地問題などの必要性の高い地域から地籍調査を優先実施する、さらに、県内でも導入されていますが、リモートセンシングデータ(航空レーザ測量、航空写真測量等)の利用などの効率的な調査手法の取り入れるなどしています。

リモートセンシングデータを活用した地籍調査の例(航空レーザ測量により作成された微地形表現図を使用して筆界案を作成した例です。※国土交通省 「航測法を用いた地籍調査のポイント」から引用)

効率的な調査手法として、山間地や林地などにおいて、わざわざ現地に行かなくても、集会所などに集まり、リモートセンシングデータを活用した筆界案を作成し、地権者等に筆界について確認してもらう方法が導入されています。(※国土交通省「航測法を用いた地籍調査のポイント」から引用)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以前、県内の某町長さん(現職ではありません)と地籍調査についてお話をする機会があり、その際、「地籍調査は目立たないし、選挙で推進するという話をしても票にならないからな~」なんてことを、冗談まじりで言われたことを覚えています。
そのようなことを言われる、地籍調査という、普段から日の当たることがあまりない事業を紹介したくて、長々とブログに書いてみました。

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