2015.12.11 [ その他南信州の伝統・文化・史跡 ]
遠山の霜月祭に息づく“誇り”と“悦び”~南信州民俗芸能【2015ー16冬】~
地域政策課のTです。
師走に入り、厳しい寒さも到来しました。いよいよ冬の民俗芸能もシーズン真っ直中。
その先陣を切って始まったのが、国の重要無形民俗文化財である遠山の霜月祭。その真髄を知るには、何よりも現地で目の当たりにするのが一番。というわけで、今回、職場の希望者を募り、12月6日(日)の南信濃小道木の熊野神社におじゃましました。
面(おもて)が登場する目安が午後9時頃ということで、8:20頃神社に到着。早速、社殿に入ると内部は氏子のほか観覧者やカメラマンで溢れかえり、禰宜(ねぎ)による神事や氏子の皆さんによる神楽の奉納が繰り返し行われていました。
霜月祭りは、最も太陽の力が弱まり、生命の力が衰える霜月(旧暦11月)に、諸国の神々を招き、湯を立て、神楽を奉納し、五穀豊穣、社会安泰を祈る祭り。そのため、社殿(舞殿)の中心には大きなかまどに二つの湯釜が据えられ、その上に神々を迎えるための湯の上飾りが吊されています。その周りで、神事や神楽舞の奉納が繰り広げられます。それぞれの所作には、それぞれ意味があり、神事は各方角ごとに繰り返し行われるため夜を徹して進められます。この過酷な状況をさして「寒い、眠い、煙い」と3拍子で表現されています。
さて、面が出る目安時刻を大幅に過ぎても一向に登場する気配はありません。様子をうかがっていると、この状況は休憩でしょうか?それはそうでしょう。氏子の皆さんは過酷な状況で休みなく動いているのだから休憩や腹ごしらえも必要です。なんと、われわれ見物人にも御神酒と味噌汁が振る舞われるんです。面の登場ばかりを期待する自己中心的な自分に反省しつつ、運転手であった筆者は温かい味噌汁をおいしく頂きました。
10時を回った頃、4名の氏子による襷(たすき)の舞が始まりました。扇の舞に続き太刀の舞が奉納されます。気持ちの入った見事な舞に拍手喝采です。
いよいよ大詰、若者たちが「オイサ、オイサ・・・」のかけ声とともに円陣を組みながら舞殿内を練り周り、所狭しと飛び回ります。日頃のストレスをぶちまけるように弾け、悦びに溢れる姿。思うにこれが霜月祭りに参加する醍醐味なのでしょう。やはりお祭り(民俗芸能)は、観るものではなく、やるものであることを再確認した瞬間でした。
お目当ての最初の面が登場したのは、午後11時15分頃。会場はこれまで以上に神々しい雰囲気に包まれます。優雅な動きでゆっくりと舞殿を練り歩き、いよいよ湯釜の前に。祭りのハイライト“湯切り”に場内の視線が集中します。一瞬の静寂の後、蒸気が一気に吹き上がり、お湯が四方に飛び散りました。社殿は歓声と拍手の渦。筆者もわずかではありますが、無病息災によいとされる湯を浴びることができました。
祭りはまだまだ続きますが、今回はここまでで中途退席。霜月祭りを理解するには到底およびませんが、800年もの歴史と伝統を受け継ぐ“地域の誇り”やそこへ“関わることの悦び”などその魅力や醍醐味の一端に触れさせていただき、神々のパワーを少しお裾分けいただけたものと思います。
さて、遠山の霜月祭りも他の芸能に違わず、人口減少による継承の危機にありますが、若手の皆さんが立ち上げた“野郎会”の取組が実を結び、今回多くの若者がやりがいを持って参加している姿を見ることができました。また、阿南高校に新たに発足した郷土芸能同好会の皆さんが参加する姿もありました。南信州の宝である伝統芸能を守るため、こうした若者が参加する取組のさらなる広がりが期待されるところです。
最後に、遠山の霜月祭は、まだまだ続きます。皆さんもぜひ自ら足を運び、ご体感ください。
【今後の開催日程】
11日(金) 上町 正八幡宮(上村上町)
12日(土) 木沢 正八幡神社(南信濃木沢)
13日(日) 拾五社大明神(上村下栗) 和田 諏訪神社(南信濃和田)
14日(月) 程野 正八幡宮(上村程野)
15日(火) 尾野島 正八幡神社(南信濃 八重河内)
遠山郷観光協会 霜月祭のホームページ → http://www.tohyamago.com/simotuki/
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