南信州お散歩日和 南信州は、広い長野県の南端に位置しています。やわらかい方言が使われ、人も土地柄も温かく穏やかな当地域には、 各所に温泉があり、賑やかなお祭りもたくさんあります。 この地域ならではの魅力を職員がお伝えしていきますので、 南信州にどうぞおいでなんしょ!

南信州お散歩日和

南信州は、広い長野県の南端に位置しています。やわらかい方言が使われ、人も土地柄も温かく穏やかな当地域には、 各所に温泉があり、賑やかなお祭りもたくさんあります。 この地域ならではの魅力を職員がお伝えしていきますので、 南信州にどうぞおいでなんしょ!

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“知られざる農業遺産”に興味津々!全集中?

こんにちは!農地整備課のTall&Fallsです。この度、㈱南信州観光公社様の企画による「南信州・ふるさと再発見の旅」「“知られざる南信州の農業遺産”竜西一貫水路を訪ねる」ツアーが開催されました。その様子をリポートします。

 ところで「竜西一貫水路(りゅうさい  いっかん すいろ)」って、何?

竜西一貫水路は、駒ケ根市の天竜川にある南向ダムから取水して、中川村にある南向発電所で利用された放水の一部を水源とし、天竜川西側に位置する飯田市、松川町、高森町の農地およそ700haを潤す農業用水路です。

が、延長24kmのうち4km(17%)だけが地表【開渠(かいきょ)】に現れ、20km(80%)は地中【暗渠(あんきょ)】を通っており、まさに“知られざる農業遺産”となっています!?

10月28日

10:30 「南向(みなかた)発電所

天気晴朗!

さて、参加者を数えてみると18名、うち女性が12名!

年齢層は50~80歳代。

南向発電所は、上伊那郡中川村渡場(どば)地籍の天竜川左岸にある変哲のない発電所?

いえいえ、一万円札の肖像画となっているあの福澤諭吉の娘婿で日本の電力王とも称される福澤桃介が昭和4年に建設した水力発電所です。

その水は、駒ケ根市の天竜川にある南向ダム(「土木遺産」)から取水し、発電所まで約11kmを導水してから発電しています。

発電所の後ろにある巨大な?導水管も注目ポイント!

外観はロマネスク風の大きな窓が、今やクラシカルでオシャレ!?

 

 

 

 

 

 

残念ながら建物には入れません・・・が、入り口には桃介の胸像と記念碑が建立され、水力発電に欠かせない大きな水車のオブジェも置かれています。

記念碑の冒頭には「水燃而火(水燃えて火となす)」と刻まれ、桃介の強い信念が伺えます!

 

10:50 「竜西一貫水路の頭首工(とうしゅこう)と天竜川横断水路」

南向発電所で利用された放水の一部を天竜橋(松川町)のたもとで取水、この取水施設を「頭首工(とうしゅこう)」といい、ここからいよいよ“竜西一貫水路の旅”が始まります!

その始まりの標高は460m、果たして24km先の分水槽の標高は何m?答えは後ほど・・・

ここからは、竜西一貫水路の管理団体である「長野県竜西土地改良区」の職員が水先案内人として熱い想いを語ってくれました。

勢いよく流れる水の迫力に、参加者達はジッと見入っていました!

「水深はどの位?」

 

 

 

 

 

頭首工の傍らにある碑文には「豊水萬代」という水に対する地域の願いとともに、工事で殉職された3名のお名前が刻まれています・・・合掌。

取水した後は、直ぐに天竜川の下を左岸から右岸へと横断します。

が、近年の河床低下により横断水路が水面に剥き出しの状態となり老朽化も進み、大規模地震による破損の恐れがあるため、農林水産省が平成29年から耐震化工事を行っている最中であり、天竜川の地下およそ20mに新たに直径2mの水路トンネルを掘削しています。

この天竜川横断水路は、地下に潜った水が逆サイフォン方式により対岸の地上へと水を押し上げる構造になっており・・・逆サイフォンとは赤い取手をシュポシュポするあの灯油ポンプを逆さまにした原理で・・・説明が難しいので詳細はネットで検索!

悪しからず・・・

「エッ!川の下を流れているの?」

天竜川の左岸から河床の下にある「逆サイフォン管」の中に吸い込まれるように流れ下った用水が、右岸では噴き上がるように流れ出てきます!?

 

 

 

 

11:40 昼 食

12:55 「胡麻目沢水路橋(ごまめさわすいろきょう)」

高森町吉田地籍にある胡麻目沢の奥深く、水路橋を求めてGo!

胡麻目沢を遡ると間も無く道路と沢を跨ぐ、幻の鉄道橋跡?と、見間違うかのような水路橋が見えてきます。


人・車・電車のみならず“用水も”道や川を橋で渡ります!

 

 

 

 

 

 

因みに、水路橋の耐震化工事は県営事業で実施したところです。(白っぽく見える三つの橋脚の部分)

水路橋の脇にある急な階段を上ってみれば、隧道を抜けてきた用水が水路橋を渡り、再び隧道へと緩やかに吸い込まれていく様子を覗き見ることができます。

 

 

 

 

 

13:40 「円筒分水工(えんとうぶんすいこう)」

高森町下市田地籍にある昭和34年に造られた円筒分水工は、一貫水路の受益地である各水田へ面積に応じた水量をゲート操作といった人の手間をかけずに公平に分水する優れもの!

一貫水路からサイフォン方式により円筒分水工の真ん中の穴へと用水を噴き上げて、その外側の壁に開けられた穴の数(=水田面積)に応じて分水する構造は巧妙!

参加者も興味津々!好奇心を存分に発揮しながら全集中?

因みに、外側の壁に開けられた13個の穴を2個、3個、8個の割合に隔壁で分けて、3方向の水路へと配水しています。

円筒分水工は県下でも数少なく、噴き上げられた用水が小さな穴へと分水される様を眺めてみるのも、ちょっとお勧めです!

百聞は一見に如かず!同地籍にある「桜堂の桜」がランドマークです。

「何だこれ!?」

“ミステリーサークル”ではありません。

分水施設です!

 

 

 

 

14:10 麻績の舞台桜前の「開渠(かいきょ)」

水路は等高線沿いに山腹を縫うように掘り進められ、元善光寺の近くにある麻績の舞台桜及び座光寺自治振興センターの下で、「座光寺隧道1号」を抜けて顔を出します。

約150mに渡る貴重な?開渠区間であり、陽射しを浴びながらキラキラと流れていきます。

 

 

 

 

 

14:50 「毛賀沢水路橋(けがさわすいろきょう)」

松尾城址公園と鈴岡城址公園を繋ぐ歩道橋が、実は(本当の話)毛賀沢水路橋です!

人目に付きにくく、ちょっと地味な所ですが・・・

南信州の農業を支える重要な生命線です!

 

 

 

 

 

渓谷の深さに驚く前に、よくよく足元を見れば歩道の下を用水が流れています。

深い谷底と古びた水路橋の上を歩くという二重のスリルが味わえる?

いえいえ、だいじょーぶ!

県営事業で耐震化工事を実施済みです!

 

 

 

また、松尾城址公園側から水路橋を渡る手前には、美しい橋のアーチ構造を望むビューポイントとして農地整備課の職員が設置した案内看板があります。

Check it out!

 

 

 

 

 

 

合わせて、かつて信濃国の守護職を巡る松尾城主と鈴岡城主の間で起きた谷底より深い妬み?恨み?怨念?による恐ろしい小笠原家殺人事件!?いやいや歴史も学びました。

15:40 「分水槽(ぶんすいそう)」

西天竜一貫水路24kmにわたる旅の終着点です。

用水の取り入れ(頭首工)地点の標高460mから24km流れ下ったこの分水槽の標高は438mで、その差は22m。用水が約1km流れると1mの落差(勾配)となります。

最上流部での取水量の迫力とは異なり、途中で数多く分水しながら最後は天竜川へと静かに流れていきます。

因みに、朝7時に取水した用水が、ここまで辿り着くのは同日の夜7時!とのこと。

およそ12時間の旅となり、流速にすると・・・秒速で0.55mか?

畑の中にひっそり佇む分水槽は、ちょっと寂しげ・・・?

 

 

 

 

 

 

ツアーの皆さんとはここでお別れ、その後は天龍峡大橋の「そらさんぽ天龍峡」へと向かいました。

今回の「“知られざる南信州の農業遺産”竜西一貫水路を訪ねる」ツアーをとおして、用水をめぐる先人の苦労や、水路延長24kmのうち20㎞が地下に潜っていてもその水が農業をはじめ地域用水としても恩恵を与えているなど、実は身近な水路だということ。そして、水を少しでも遠く広く農地へ届けられるよう、普段目にしている天竜川の上流を水源として、いくつもの川の下を通過する「サイフォン」、川や道路の上を渡る「水路橋」、山と集落の下を通過する「隧道」などで結びながら、水路の高さを保つための様々な土木技術「円筒分水工」などの工夫が凝らされていることなど、まさに“知られざる秘密”の一部を知ることができたのではないでしょうか?

追 伸

その後、ツアーを主催した㈱南信州観光公社様によりますと、

「川と思っていた所が水路であったこと、田んぼの水が遠くから自然の力で流れてくること、天竜川の下を水路が横断していることに驚いた。」

「地元の知らない財産を知ることができて興味がわきました。」

などの声が聞かれたようです。

農業用水路というものを知ってはいても、やはり実際に現場を見るとでは全く違うようで、用水をめぐる先人の苦労や驚きの技術、それを体験して学んだことが心に残り用水への愛着を少しでも感じてもらえたなら・・・竜西一貫水路にとってかけがいのない応援団が増えた!・・・かも?

何はともあれ、この先も用水を大切に想ってくれることでしょう!!

時に目を輝かせて説明に聞き入り、真剣な眼差しでメモを取り、質問をする姿勢に感心させられながら、私たちにとっても充実した一日となりました。

以上、農地整備課のTall&Fallsがお伝えしました!

なお、信州の疏水、ため池、棚田などの魅力を以下のサイトで紹介していますので、是非一度ご覧ください!

■一度は訪れたい 信州の農業資産

 https://www.pref.nagano.lg.jp/nochi/nougyoushisan.html

■信州の農業資産を巡る旅

 https://nagano-agri-inheritance.jp/

■信州棚田ネットワーク

 https://shinshu-tanada.jp/

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