2018.03.12 [ 南信州の伝統・文化・史跡 ]
南信州民俗芸能継承フォーラム~南信州の宝「民俗芸能」を未来に伝承するために~
企画振興課のRMです。
3月4日(日)に、南信州民俗芸能継承推進協議会の主催により、「南信州民俗芸能継承フォーラム」が開催されました。
フォーラムは、継承の危機にある民俗芸能への理解を深め、地域の継承意識の醸成と高揚を図るとともに、民俗芸能を活かした地域活性化のあり方を考えることを目的に開催されるもので、今回は児童・生徒の皆さんよる芸能発表を中心とした「後継者育成」に主眼を置いた内容になっています。
第1部は、國學院大學文学部教授の小川直之先生による記念講演です。全国各地の民俗芸能継承の取組について、具体例を挙げながら解説をいただきました。
特に「保存継承団体のNPO法人化」や「ボランティアセンターの設立」が当地域でも実現できれば、継承に向けて大きな力になると感じました。今後の検討課題です。また、当地域で進める「南信州民俗芸能パートナー企業制度」(制度ホームページへリンク)について、こうした仕組みは奈良時代からあったことにも言及されました。今も昔も、お祭りは何をおいても参加すべきものだったのですね。
第2部前半は、「次世代へつなぐ姿」児童・生徒の皆さんの芸能発表です。
トップバッターは、向方冬祭芸能部の小中学生4人による「向方のお潔め祭り」(国重要無形民俗文化財)の「花のやうとめの舞(花の舞)」です。湯立て釜の回りを手に持つ物を変えながら舞います。
この花の舞は、しばらく途絶えていたのを平成27年に復活させ、以来毎年舞われているそうで、今回舞ったのも地元の向方の子どもたちです。こうした芸能は一度途絶えると復活が難しいものなのですが、関係者の皆様の努力に本当に頭が下がります。普段、なかなか見ることのできない貴重な舞であり、子どもたちの息の揃った舞に非常に感銘を受けました。
続いて、阿南高等学校郷土芸能同好会の「新野の雪祭り」(国重要無形民俗文化財)の「幸法」の舞です。幸法は雪祭りの庭の儀で登場する面神で、神殿に向けて3歩で前進し、手に持つ松と団扇を合わせて拝み、3歩すり足で下がるという舞を3度繰り返します。これは神様と人が一年の豊作を約束する「三三九度」の舞なのだそうです。
今回、2年生が同好会の中心になって初めての発表とのことでしたが、舞、笛、太鼓全てが大変見事でした。同行会の生徒たちは、雪祭りのほか、遠山の霜月祭り等にも関わっており、卒業後も後継者として活躍しています。ちなみに、今年の雪祭りの幸法役は、この郷土芸能同好会のOBでした。心強い限りです。(→今年の雪祭りの様子(南信州お散歩日和))
続いて、飯田女子高等学校人形劇クラブの「黒田人形」(国選択無形民俗文化財)の発表です。演目は「傾城阿波の鳴門 巡礼歌の段(けいせいあわのなると じゅうれいうたのだん)」です。徳島藩のお家騒動に巻き込まれ名を変えて浪速で暮らしている母の元に、地元に残した我が子が訪ねてきますが、親子の名乗りをしたのでは、子にどんな災いが起こるとも限らないため、母とは明かさずに涙を飲んで別れるという、母子の情愛を描いた作品です。
人形劇クラブは、平成29年度に発足したばかりで、部員は3名。今回が初舞台でしたが、黒田人形保存会の皆さんの応援により立派に演じました。中でも、母子の別れのシーンなどは、太夫の語りに合わせて絶妙な人形使いを見せ、会場の涙を誘いました。とても初舞台とは思えない、今後に期待が膨らむ発表でした。
最後は、大鹿歌舞伎保存会の高校生2人による「大鹿歌舞伎」(国重要無形民俗文化財)の発表です。演目は「源平咲別躑躅 扇屋の段(げんぺいさきわけつつじ おおぎやのだん)」で、平氏の平敦盛と源氏の熊谷直実の合戦を描いたものです。この演目は戦後50年近く上演されませんでしたが、平成15年に大鹿中学校の歌舞伎公演で復活上演されました。大鹿歌舞伎でも関係者の皆様の努力による復活の事例があったのですね。
演じた高校生は、大鹿小学校又は中学校で歌舞伎を習っており、この演目も経験があったそうで、息の合った迫力ある合戦シーンを演じていました。堂々とした見得に、会場から掛け声やおひねりが飛びます。まるでベテラン役者のような姿に大変感心しました。
芸能発表の後は「若き継承者の思い」として、阿南高等学校郷土芸能同好会OBの下平洸弥さんからビデオメッセージが寄せられました。下平さんは、2年生の時に郷土芸能同好会を立ち上げ、卒業後も地元阿南町新野で暮らし、新野の雪祭り等の継承者として活躍されています。お祭りが生活の中心となっているそうで、就職先の決定もお祭りのための休暇がもらえるかどうかがポイントだったとのこと。下平さんは、県の推進する「一人多役」の実践者として雑誌等に取り上げられており、今後ますますの活躍が期待されます。
続いて、長野県立歴史館の笹本正治館長から講評があり、各団体を激賞されるとともに、未来の後継者にエールを贈られました。「文化を伝えることは、心を伝えることであり、その向こうに人々の幸せがある」「この素晴らしい民俗芸能を、次の世代へバトンタッチしていくことが我々大人の役割であり、本日発表された児童・生徒の皆さんにも是非受け継いでいってほしい」等、熱いメッセージが心に残りました。
第2部後半は、企業で取り組む民俗芸能の継承支援について、「南信州民俗芸能パートナー企業」を代表して、興亜エレクトロニクス株式会社(企業ホームページへリンク)の伊東達也さん、飯田信用金庫(企業ホームページへリンク)の大蔵雅彦さんから活動報告がありました。
興亜エレクトロニクスでは、従業員の皆さんが民俗芸能に参加しやすい環境づくりとして、地域の祭りの日程を考慮した工場の稼働カレンダーを作成するとともに、祭りの中心となる従業員の方の名簿を共有し、休暇取得に配慮しているとのこと。また、飯田信用金庫では3日間の「コミュニティ奉仕休暇」制度により民俗芸能への参加を推奨しているほか、自社のホームページ等で南信州の民俗芸能の情報発信を行っているとのこと。両社とも、企業理念として「地域と共に発展する」という姿勢を掲げており、まさにパートナー企業の「鑑」というべき存在です。こうした企業の皆様とともに、さらに南信州の民俗芸能を盛り上げていければ良いと感じました。
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