2011.01.17 [信州うるし工房 彩(飯山市)藤澤一雄さん]
技術にプラスアルファするもの
産地じゃなければ体験できないこと
-学校で蒔絵体験ができるというのは、なかなかないですよね。
子どもたちの前では最初に「蒔絵」って漢字を書いて、聞くんです。「何て読むかわかりますか?」って。今はこの字を使わないから「ときえ」とかって言われちゃうんですけど、蒔絵の「蒔」という字は「種蒔き」の「蒔」。絵の上に粉を蒔いているんですよ。それで蒔絵って言うんです。だから、「種蒔き」の「蒔き」なんだよって。これからみんなに体験してもらうのは、金の粉を蒔く作業なんだよって。まあ、蒔いたら磨いて、また漆を塗って磨いて、っていう工程があるんですけどね。
-貴重な体験になりますね。
産地の子どもじゃなければ絶対体験できない、ある種の特権のようなものです。漆、漆器は「ジャパン」と呼ばれているくらい、本当に日本の古来の伝統工芸ですからね。
私が小さいころは、親父の仕事場に入って道具を触ったら怒られていました。「仕事の道具だから触るな」って。今はずいぶん変わりましたよね。子どもが触っちゃいけないものだったのが、小学生の頃から体験できる。まあ、ぱっと見るだけじゃどうやって作られているかなんてわからないですから、作業しているところを見たり、実際に作ったりというのはいいことだと思います。
これをきっかけにして、体験した子どもが興味を持って、将来こういうのをやりたいなって思ってくれたら面白いですね。中には食らいついてくる子もいるし、体験をきっかけにして興味を持って、芸術系の学校へ行った子もいるみたいですから。
やっぱり後継者というか、後世に残していきたいという気持ちはあります。蒔絵がもっと評価されてもいいんじゃないか、という思いもありますし。だから、こうやって子どもたちに知ってもらうことは、意味があるんじゃないかなと思っています。
「自分の足で情報を得ることが大事。お客様とのコミュニケーションが宝だから」と話す藤澤さん。「今日、藤澤さんが来るっていうから(時計を)つけてきたよ」「次はこういうのを作ってほしい」と言われると本当に嬉しいと笑います。
しかしいったん筆をとると、その先は蒔絵と向き合う世界。漆塗りや粉蒔きを事も無げに行い、作業は流れるように進んでいきます。技術の裏打ちがあってこそのデザインや感性。これからもその腕で「ジャパン」を生み出し、その素晴らしさを伝えていってくれることでしょう。
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