2010.11.24 [諏訪湖漁業協同組合(諏訪市)藤森貫治さん]
すべての食材の中でフナが一番
「ふなずし」とは、塩漬けしたフナをご飯とともに漬け込んで発酵させる熟ずしの一種。諏訪湖で獲れるフナを使ったものは、江戸時代に幕府の献上品として珍重されていました。
今回紹介するのはそんな「ふなずし」を「鮨鮒(すしぶな)」として140年ぶりに復活させた諏訪湖漁業協同組合の組合長・藤森貫治さん。「鮨鮒」のこと、諏訪湖のこと、そしてご自身のことを伺いました。
フナほどおいしいものはない
-「鮨鮒」はどのようにして作っているんですか?
組合の役員9人と、ほかに「鮨鮒」の部会があって、実働部隊として部会のメンバー10人くらいで作っています。
まず5月にフナを獲って、生きているうちにさばいて塩漬けにします。獲る量は1日に200~300匹。そのまま4~5ヶ月塩漬けして、10月ごろに塩抜きして乾燥させます。乾燥したらご飯と一緒に漬けるんですが、ご飯が冷めないうちに漬けるのがポイント。冷めてしまうと雑菌が入っちゃいますから。わらで縄を編んで敷いてね。ご飯の中にわらにいる乳酸菌が入っていって、フナが漬かって「ふなずし」になるんです。
ご飯と合う乳酸菌はどれだろうと、いろいろ試しました。ヨーグルトやわらなど6種類くらいで試したら、どれも全部発酵が見られました。何を使っても大丈夫なら、せっかくだから地元のものを使いたい、ご飯はお米だからお米を育てたわらの中にいる乳酸菌が一番いいんじゃないか、ということでお米を作った田んぼのわらをもらってきて使っています。フナもお米も「諏訪産」です。
-評判はどうですか?
昨年から販売を開始しましたが、もうリピーターの人がいます。今年漬け込んだのは700匹(販売数は400匹)ほど。まだ売り始めたところだし、なかなかたくさんはできないので残念ながらお断りしてしまった人もいます。ゆくゆくはもっと増やしていきたいですけどね。
でも現実的には、2,000~3,000匹くらいをきちっとコンスタントに作って、ブランド品としてやっていければいいんじゃないかと思っています。ブランド品にするというのは商品の価値を高めるということ。材料、製造工程、そして品質についても保証しないとブランド品として確立できないから、最初からそれをきちっと守っていこうとしています。
例えば、品質保証。菌の数、詳しく言うと一般細菌、大腸菌、そして一番大事な乳酸菌がそれぞれどのくらいいるのかというのを公的機関で調べて、検査結果が出てから販売することにしました。結果は、一般細菌が47万、乳酸菌の数が47万。実は乳酸菌は一般細菌に入るから、ほかの細菌は0っていう検査結果が出たんです。大腸菌は1グラムの中に270以下ならいいということになっているんですが、大腸菌は10以下でした。雑菌がそれだけいないということは、純粋な乳酸菌を発酵させてできたってことだから、余計なものがなくて味がいいってことなんですよ。もちろん味には自信を持ってはいましたが、科学的にも立証されて、本当に自信を持って薦められる商品だと思っています。
-江戸時代は献上品だったそうですね。
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