2012.03.26 [フジゲン(松本市)代表取締役社長 上條啓水さん]
職人たちが作り上げる「音」 世界のギターファクトリー
くびれた曲線、光沢を放つボディー。
エレキギターをつくりあげるフジゲン大町工場には、弦の奏でる官能的な音色が響いていました。
ギターづくりの工程に「職人さんのワザは欠かせない」とのこと。木を磨き、色を塗り、金属部品を組み付けていく…一部機械も導入されていますが、およそ半分は「ひとの手」によってつくられています。
長野県のすごいものづくりとそれを創る人物の魅力をご紹介する「信州魅力人」。エレキギターのフジゲン社長上條啓水さんの3回目です。
―フジゲンのホームページhttp://www.fujigen.co.jpを見ると、有名なギタリストたちが御社のエレキギターを愛用しているんですね。フジゲンのギターが愛される理由は?
弾きやすさ・・・つまり「品質の高さ」に惚れていただいて、使っていただいているんだと思います。
―その品質の高さというのは、もともと50年の歴史があるのがそもそもなんですが、この地でなければ為し得ないものなんでしょうか。
まず一つは、「日本でつくっている」ということが大事です。
日本は、世界の中でもギターの大きな市場なので、ギターを弾く人がたくさんいるんです。
市場が近くにあることによって、「ギターが好きな人」が弊社で働いてくれている。
また、日本国内のお客さまは、世界でいちばんと言えるくらい非常に「厳しい目」を持っています。
弊社は東京に直営店があり、インターネットを通してもお客様に販売しているんですが、お客さんの声がダイレクトに入ってくる。日々、「こうしたほうがいい」というようなたくさんの意見をいただきます。その意見を製品づくりに反映できるのです。
ギターを弾く人がたくさんいる、厳しい目を持ったお客様が多い、そういう日本でつくり続けていることと、これまで職人さんが継承してきた技術とが合わさってよいものが生まれると思います。
それに、長野県の気候はいいですね。あんまり湿気がなくて、木材加工には適しているんだと思います。
―クルマの部品をはじめ、工業製品は人件費が安い海外にどんどん出て行ってしまう。円高も深刻ですよね。元々はギター産業も、県内や国内にたくさんのメーカーがあったのに今はずいぶん減ってしまった。これからの日本のものづくりを考えると、ちょっと悲しいですね。
ギターをつくる会社も、いまはもう数社しか日本にありません。
それはギターの業界だけではなく、日本の全ての製造業が同じだと思うんですが、どんどん海外や中国に仕事をとられてしまいました。
海外へ行ってしまういちばんの問題は、技術の継承がされない点だと思います。
ギターもそうですが、我々のようなアナログの産業をやる技術がだんだん継承されなくなっているのではないかなと思います。
この先ますます、技術を持っていた先輩方が高齢になっていきます。
早くその技術を若い方へ継承していかないと、この日本でギターを作れなくなってしまうのではないかというのを非常に危惧しています。
今はまだ、いい職人さんたちが残っています。
そのワザを若い人に継承し、何十年後も同じ品質のギターをつくれるようにしたい。
今は異常な円高で、日本製はすごく大変な時期です。しかし、この苦難をしっかり耐えて技術を継承していけば、将来再び日本製が見直されるときが来るのではないかと確信しています。
日本製が見直される「そのとき」に、ものづくりができなければどうしようもない。だから今もう一度、ものづくりを見直しているところです。
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