信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

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根底にある「シナノ技術」で新商品を開発 スキーポールをつくり続け66年

皆さんはこの冬、スキーに行きましたか?
「そういえば、最近行っていないな…」という方もいらっしゃるのでは。
今年は、長野県にスキーが伝わって100年。県内各地のゲレンデでは記念イベントも開催されています。
高速リフトなどの設備はもちろん、スキーもボードもウエアまで一式含めてレンタルも充実、美味しいランチがあったりと、最近のゲレンデは一昔前に比べて随分進化しています。

長野県のすごいものづくりと、そのものづくりを支える起業人の魅力に迫る「新・信州魅力人」。今回は、スキー関連の話題です。佐久市のスキーポール製造メーカー・シナノ、柳澤光宏社長をご紹介します。

―スキーポール(ストック)の「シナノ」と言えば、スキーをやっている方にはお馴染みのブランド。スキーポールの実績は何年くらいになりますか?

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昨年で65周年、今年が66年目です。
66年間、スキーのストックを作り続けています。ストックからスタートして、ずっとそれ1本でやってきました。

―60年以上の歴史というのは、すごい。まさにスキー文化を支えてきた。スキー場の観光が長野県の大きな産業であるように、スキー用品であるストック生産というのも、地域に根ざした地場産業ですね。

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そうですね。元々は私の曾祖父が始めたんです。
今年は長野県にスキーが伝わって100周年。長野県はそのころからすでにスキーが盛んだったから創業したのだと思います。

―観光面からも今「スキー人口の減少」が課題になっていますが、スキーをやる人が減れば、当然スキーのポールを買う人も減ってしまう。これは経営面からも大変な問題なのでは?

そうですね。私はその時まだ在籍していませんでしたが、1990年代にバブルが弾け、スキーポールの売上げも激減してしまいました。その当時が一番苦しかったようです。


もしあなたの勤める会社が、毎年、しかも数年間にわたり2~3割ずつ売上を減少させていたら、どうしますか?
シナノは、そんな苦境を乗り越え、新たな分野を開発してきた企業です。

全盛期には年間100万組を生産していたというスキーストックは、現在わずか十数万組。市場が縮小する中、企業存続のためシナノがとった戦略は「発想の転換」でした。ストックを「スキー用品」と捉えるのでなく、「杖の一種」という発想で捉え、ダイナミックな業態変化を図っています。


―社長の後ろに、ズラーっと商品が並んでますね。よく見ると、スキーのポールだけじゃない(笑)。現在、御社には他にどんな商品があるんですか?

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シナノ=スキーポールと思っている方々に言うとびっくりされるんですが、スキー用品は、今は3割弱になっています。
現在では、登山用のストック、高齢者が使う杖などが増えてきている。他にも話題になっているポールウォーキング専用のポールも作っています。

―同じような杖に見えても「登山用」と「普通の杖」と「ウォーキング用」では、商品の機能はもちろん、ターゲットとなるお客様も、流通を含めた市場・売り場も全然違うと思うのですが…。

そうですね。確かにまったく違うように見えるかもしれませんが、弊社の「強み」は一貫しているんです。
私どもは66年前から「丸いパイプの加工」に長けていました。この「核となる技術」を活かしている。
それに、どの商品も「体を支える」「サポートする」という機能は同じです。
ですから、スキーストックで培った技術が、登山用の「体を支える」という部分で活きています。使う場面は異なりますが、根底にある「シナノ技術」が全ての商品に活かされているのは大きい。

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―実際にものづくりの現場を見せて頂き、改めてすごいと思ったのが、ここ(長野県佐久市)で作っているということ。
佐久工場で、金属の棒の切り出しから、表面加工やプラスチック部品の設計、最終製品としてできるまで全て自社で作られてしまうんですよね。それに、デザインまで自社でやっている。人件費の安い海外にものづくりが流れて行く中、製品の設計から製造まで自社でやっているのがすごい。
「長野県でつくる」ことにこだわりはあるんですか?

実際は、100%すべて佐久でつくっているわけでなくて、中国と台湾に協力工場がありまして、そこでも作っているんです。
「長野県でつくる」のはやはり高品質、高価格帯のもの。商品によっては使い分けています。

―海外で作るものと、長野県でつくるものでは、具体的に何が違うんですか?

まずは使っている材質が違います。こういったアルミの材質ですね、コレが違うのが1つ。あとは手で握る場所やデザインが変わってきます。付加価値の高いものを国内で作っています。

―「握る部分」というお話がありましたが、実物をいろいろ見てみると、例えばスキーのストックのグリップの部分でもいろんなものがありますね。登山用のはもちろんですが、特に、お年寄りが使う普通の杖になると、杖の先についているゴムの部分が滑り止めタイプになっていたり、握る部分の色や形状など、本当に色々と工夫されていますね。そういうものも全部社内でやっていらっしゃるんですか?

ウチは企画開発から製造まですべて一貫してやっております。一貫生産は強みのひとつであると思います。
シナノの製品が支えているのは身体です。体を支えるのは「握り手部分」で、地面が接しているのが「先端部分」です。この二つの部分が一番工夫しがいがありますし、こだわれるところだと思います。それを66年間やってきたノウハウがある。ウチの商品を使ってくださった方は喜んでくださいます。

―開発まで含めた一貫生産が「強み」というのは、現場からもよくわかりました。スキー、登山、杖、ウォーキング用と用途は違いますが、開発の根底にあるのは「使いやすさ」ですか?

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やはり「使った人がどう感じるか」は大事です。
使いやすいものをつくりたい。開発の原点が、ユーザーさんの「こんなもの無い?」というところからスタートしているので、それを試行錯誤しながら製品化までしていくのが醍醐味だと思っています。

―スキーのストックは66年の歴史がある。ここまで来ると製品自体は完成形に近づいていると思うのですが…まだ改善の余地はあるんですか?

改善の余地はあると思います。
現在はアルミが主体となっている「棒の部分」も、竹から始まって、次にアルミ、カーボンと進化しています。数年前からはカーボンナノチューブという最先端の素材を使用したシャフトも作りました。
ただ、材質については(自社内で新素材を開発するわけではないので)ある程度、進化するところまで行き着いていると思います。
しかし「握る部分」については、改善の余地や、まだまだ新しいものが出来ると思います。

―ものづくりについて、御社がこだわっているのはどんなところでしょうか。

お客さんのニーズを吸い上げ、どれだけ形にできるかというところだと思います。
例えばスキーならば、グリップの大きさや形状。(手にしたポールを見ながら)これは楕円形ですが、どこを削るかなど考えていきます。本当に細かい感性的な部分が大事。感性工学という部分なのでしょうか、試行錯誤しながら作っていくということにこだわっています。

―開発スタイルを見ても、スキーで培った技術が活かされている。あとはブランド力ですね。スキーポールで築いてきたブランドが、他のアイテムにも浸透し始めてきているという実感はありますか?

そうですね、スキーでのブランドを他の製品にも活かせるように、これからもPRを含めて力を入れていきたいと思っています。

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