信州魅力人

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常識を覆す技術は「少数精鋭」から 従業員7人「須坂発グローバル企業」へ

ナディックは最終製品としての「モノ」はつくっていません。
仕事は「金型の設計」。金型設計は、製品の品質の80%が決まる重要な部門です。つまりナディックは、製品をつくるための「精緻な枠組み」を創る企業なのです。

須坂駅に程近い住宅街にあるナディックの従業員はわずか7人。もともと幼稚園だった建物を間借りした社屋では、数人の設計スタッフがパソコンや図面に向かっていました。
お世辞にも大きな会社とは言えないナディックですが、めざすのは「須坂発のグローバル企業」。
ナディックで開発した特許技術が、世界のものづくりの現場で使われる・・・、従業員7人の世界企業が誕生するかも知れません。

長野県のすごい技術にスポットライトをあて、そこに関わる人物の魅力に迫る「信州魅力人」。ナディック社長・上野栄一さんの最終回です。

―上野社長は現在38歳。お若いですよね。社長に就任されたのが3年前。すごく大変な時期だったんですよね?

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2008年にリーマンショックがあって、非常に景気が悪くなった。ナディックも売り上げ激減です。
それまでは父親がナディックを経営していました。元々、家族経営に近い形だったんです。リーマンショックの影響で従業員にも退社していただきました。私の父親は、従業員を切ったのに「自分だけお金をもらって残るわけにはいかない」と、ある日突然「お前、社長交代だ!2月で交代だと!」私に言いました。
言われたのは1ヶ月前。突然ですから、言葉を失った。
「何で?」と聞くと父は、「リーマンショックが起きて、交代するには1番いい時期だ」と言うんです。意味がわからないので、さらに「何がいい時期なのか?」と聞いたら、「これ以上落ちることはない」と(笑)。
「次は上がるしかないだろう」と。

そういうわけで、いきなりの交代劇があったわけです。
今になって思えば、私も、1番苦しい時期に交代したので、これからもっと頑張ろうという気にもなりました。そういう意味ではモチベーションが上がったので、非常に感謝しています。

―どのメーカーさんも、リーマンショック後は非常に厳しい時代だったと思います。御社も非常に厳しい時期を乗り越えてきた。苦境を乗り越えるために、若き社長として経営する上で心がけたことはありますか?

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それまで私は、一従業員、一社員だったんです。
だから、社員の苦労や心配していること、やっていることは、誰よりも分かっていると思っていました。

リーマンショックをきっかけに私が一番重要視したことは、社員を信頼することです。とにかく信頼して、それをベースにやっていこうということ。
上からなにかやる経営ではなく、みんなが一体になり、「全員が経営者」でやっていけばいいと思いました。
みんなで頑張ったからこそ苦境を乗り越えたと思っています。

―社長の大事な仕事は、ビジョンを示すことだと思います。「技術力」で生きる御社の場合、そのビジョンの中心はやはり「技術力」ということになりますか?

そうですね。
7名という人数の中で、私が求めているのは、技術開発で会社を“大きく”していこうということです。会社の規模を大きくするのではなく、少数精鋭。少人数の中でどれだけのことができるか、ということです。
そういう意味で、小さくても「大きな企業」と呼ばれるような会社を目指しております。

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―「大きな企業」というのは従業員数や売上高、会社の外観や設備ではなく、技術やアイデアなんでしょうね。

そうですね。
今生き残っていくために必要なのは、技術やアイデアです。
ナディックができない部分については、協力会社が日本中にあります。
できないときにどこか協力してくれる会社さんがあれば鬼に金棒。できないものは何もありません。
そうやっていけば、外観や建物、その他設備というのは二の次だと。弊社だけではできない技術でも、何か協力していただける会社さんさえあればできないものは無いと考えています。

―協力してくれる会社が多いという意味で、長野県はすごくいいところですよね。

本当にいいところです。やりたいことが何でもできますから。
これだけ充実した県は他にないと思います。
農産物は信州産が有名ですが、やはり工業製品も信州産が一番だと思います。
長野県人の気質として、非常に真面目で精度にもこだわりますね。本当に皆さんは好きで仕事をされている。
長野県で仕事ができるというのを誇りに思ってやっています。

―上野社長は厳しい時期に社長になって、第二の創業というような立場かと思います。厳密には違うかも知れませんが、ベンチャー企業の社長さんという印象です。
少し前までは、技術を磨いた若者が、ものづくりで独立起業するというベンチャー魂が長野県にも多かったと思います。でも、ここ最近はベンチャーというと、ITや洋服関係や美容室やラーメン屋などが多い(笑)。
地元の中学校の出前授業などもされている上野社長にお伺いしたいのですが、若い人に向けて、ものづくりのベンチャー企業として独立する面白さはどうすれば伝わりますか。

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教室の中で教えるということではなくて、実際に触って作ってみるということが一番大切だと思います。自分で作って感じるということが大切です。
例えば、魚でも、切り身を買ってきてそのまま焼いて食べるのとは違って、自分で釣った魚を焼いて食べるのは格別ですよね。そういう思いをしていく中で、本当に楽しいんだという部分を実際に見つける。
「百聞は一見に如かず」ではないですが、実際にやってみるというのが大切ですね。

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