2012.02.17 [サイベックコーポレーション(塩尻市)代表取締役 平林巧造さん]
長野でつくって、世界に売る 「ひとがつくるから」簡単には真似できない独自のプレス加工
「新・信州魅力人」では、メイドイン信州のすごいものづくり技術や匠の技をご紹介し、ものづくりを支える起業人たちの魅力に迫っています。
クルマのエンジン部品などを手がけるサイベックコーポレーション社長、平林巧造さんの3回目。これまでは切削などで作られていた複雑な形状を、プレス加工で効率よく量産できる独自技術が強みで、長野県でつくった部品を世界に広げていこうとしています。
ものづくりの海外進出が増える中、サイベックコーポレーションの生産拠点は塩尻の本社工場のみ。「すごい技術ですが、すぐに海外で真似されたりしないのですか?」という質問に、平林社長は「どんな部品もつくるのは人です。すぐれた工作機械を買ってきてもダメ。金型の設計や、微妙な調整は従業員の技能が必要ですから、簡単に真似できるものではありません。」と笑顔で答えます。
長野でものづくり、世界で売る
―社長は生まれも育ちもずっと長野県。で、大学は東京に行かれましたよね。東京を見てしまうと、「もうこんな田舎に戻りたくない」と思ったことはなかったですか?
私も最初、東京へ行く前までは「東京に行きたい」という思いが強くありました。
でも、実際に行くと大混雑で、電車の中も満員。そういう環境と、信州のいい空気で育った環境を比べてしまうと、「やっぱり信州はすごいな」「長野県はいいな」と、あらためて現地へ行ってみて分かるんですよね、信州の良さが。
ですから、東京での生活も最後の方は「長野へ戻ってきたい」という気持ちが強かったですね。
―最初から「会社を継ぐ」って気持で戻って来た?
いえ、そうではありませんね。
2代目3代目と呼ばれる経営者はみなさん同じ気持ちだと思うのですが、決して父親の後を継ぎたいという思いはなかったです。
私は大学を卒業して海外へ行きたかったんです。海外へ行って英語を覚えて海外の企業に就職するんだという思いが強かったので、特に親からも、会社を継ぎなさい、というようなことも一切ありませんでした。本当に自由気ままにやっていた人間です。(笑)
高精度な自動車部品をプレス加工で製造するサイベックコーポレーションの創業は1973年。
精密部品の金型開発の技術者だった、巧造社長の父、平林健吾さんが29歳のときに創業しました。
サイベックコーポレーション独自の「冷間鍛造順送プレス加工」とよばれる技術は、これまで不可能といわれていた厚い金属板を素材とした立体で複雑な部品のプレス加工を可能にしました。独自の金型や工作機を生み出したのは健吾さんの時代です。
ブドウやアスパラガス畑が広がる、塩尻市広丘のアルプス工業団地に本社工場を移転したのが1991年。それまでの「信友(しんゆう)工業」からサイベックコーポレーションに社名を改めました。
サイベックは「SYVEC」と書きますが、外国語ではありません。「信友工業」の頭文字「SY」と、Value Engineering for Customersの頭文字「VEC」を組み合わせたもの。
「Value」(価値ある)「Engineering」(技術)を「Customers」(お客様)に提供する、そんな思いが込められています。
―世界を目指し、海外で働きたいと思っていた社長が、海外とは程遠い、ローカル色豊かな場所にある会社を継がれるわけですよね(笑)
そうですね。本当に、今から思えばなんだったんだろうな、あの志は…と。
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