信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

技術にプラスアルファするもの

「飯山仏壇」蒔絵部門の伝統工芸士・藤澤一雄さんは、仏壇だけではなく蒔絵時計のブランド「Bi-sai(びさい)」をはじめ、アクセサリーなど幅広いものに蒔絵の技術を活かしています。
父・忠雄さんの跡を継いでこの道に入った藤澤さん。インタビューの2回目では、この道に入ったきっかけや、伝統工芸としてこれから伝えていきたいことについて伺います。

家業は継ぎたくないな、と思っていた

-藤澤さんが蒔絵職人になったきっかけは?

信州うるし工房 彩 藤澤一雄さん

私は2代目になるんですが、実は親父の仕事は継ぎたくないなと思っていました。何だか、地味な感じがしていたので。就職先の選択としては、隅の方に少しはあったけど…それより好きなことがしたいと思っていたので。コンピューターとかが好きだったんですよ。

でも、一生の仕事って考えたときに、どうせなら人のやってないようなことをやりたいという気持ちもありました。蒔絵は特殊な仕事ですからね。それで、結局そっちの気持ちのほうが勝ったというか…正直に言うと、景気がね。ちょうどバブル時代だったので(笑)。動機が不純なんですが。

-(笑)。もともと絵を描いたりするのは好きだったんですか?

小さいときからものづくりは見ているから、図工は好きでした。親父はとにかく絵を描くのが好きだったみたいで。戦時中の人なのに、周りがチャンバラしていても紙と鉛筆を持っていた、と聞いています。飯山に生まれて、絵を描くのが好きだったから、仏壇に絵を描くという仕事に就いたことは自然な流れだったのかも知れませんね。

親父はずっと仏壇の蒔絵一筋でした。私が仏壇以外のことをやり始めたときは、まだ親父も生きていたんですが、どう思っていたんでしょうね。直接何かを聞いたり話したりはしていませんが、「何でこんなものやっているんだ?」くらいに思っていたのかもしれません。

技術にプラスアルファするもの

信州うるし工房 彩 藤澤一雄さん

この世界に入って30年近くになりますが、未だにわからないこともあります。漆などは自然の材料だから、気候や組み合わせ方で違ってきますから。漆はある程度の温度と湿度がないと乾かないんです。梅雨時は漆を出しただけで乾いてきて色が変わったり、夏場はクーラーをつけると除湿になってしまって全然乾かなかったり。そこは「日々、修行」という感じですね。

蒔絵は技術が優れていればいいというものではありません。技術だけではなく絵柄など、すべての要素が融合して一つの作品。技術がいいのは当たり前で、それにプラスアルファで、デザインとか感性とかが大切なんだと思います。

-デザイン力や感性も身に付いていなければいけないんですね。

技術はある程度熟練してくると身についたりするけれど、そういうものはお客様との出会いによってこそ磨かれるものだと思います。なかなか難しいですけどね。自分がじっくり考えた図案よりも、妻がささっと書いた図案のほうが気に入られたりすることもありますし。使う人の身になることが必要なんでしょうね。

今はとにかく外に出るようにしています。いろいろな人に出会って、いろいろな話をして、「こういうものに描いたらどうですか?」という何気ない会話からヒントをもらうこともあります。だいたい、出張から帰ってくると筆を持つ前にまず出会った人や見たもの、話したことを整理します。元来、私は怠け者だから、帰ってきたら何も考えずに休みたいんですけどね(笑)。でもそれが次の作品作りにつながっています。

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