信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

生で食べるよりおいしいジャムをつくりたい

ガラス瓶の蓋をあけると、フレッシュなくだものの香りが部屋いっぱいにひろがり、ごろんとした果肉が残るジャムをたっぷりパンにのせれば、それだけで華やかな朝食になる…。そんなジャムを作っているのが、坂城町に主力工場があるデイリーフーズです。

長野県内では「発酵ジャム」のテレビCMでもおなじみですね。縮小傾向にあるジャム市場において、着実に売り上げを伸ばしています。

長野県のものづくりを支える「起業人」たちの魅力に迫る、信州魅力人。今回ご紹介するのは、デイリーフーズ副会長の高松宏さん。現在78歳の高松さんは半世紀にわたりジャム作り一筋。40年前に会社を起こし、現在も現役ばりばりの開発者です。
おいしさの裏にある「他社には真似できない」ジャムづくりには、高松さんの「情熱」と「新発想」がたっぷり入っているのですが、さて、どんな技術なのでしょうか?

―デイリーフーズのジャムは、粒がゴロっとして大きい。非常に高級感があり、それがまた美味しいんですよね。ジャム作りでこだわっているのはどんなことですか?

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私どもは、みなさんが口にするビンに入ったジャムのほか、業務用などいろいろな商品を作っています。例えば最近ですと、ヨーグルトの中にフルーツがたくさん入っていますね。「フルーツプレパレーション」と言っていますが、そういうものをメインにやっています。

粒が大きいのはひとつの特徴です。ペースト状やピューレ状などの潰したものより、果肉を残したものが得意なので、今はそういった粒を残した商品を集中して作っています。


ブルーベリーヨーグルトや、アイスの中に入ったジャム…コンビニでついつい手に取ってしまうスイーツ。
会社名や商品名こそ出せませんが、デイリーフーズのジャムは有名食品メーカーの「あのアイス」や「あのケーキ」、「あのヨーグルト」などに使われています。

私たちは知らぬ間に、坂城でつくられたジャムを口にしているのです。それがデイリーフーズの主力商品「フルーツプレパレーション」。フルーツプレパレーションというのは、乳業メーカーや製菓・製パンメーカー向けに販売されるジャムのことで、デイリーフーズの生産するジャムの75%はこうした業務用商品が占めています。


―食べたときの印象ですが、生で食べるよりも美味しい。これはすごいですよね。

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フルーツというのは、適熟の時に食べるのが1番美味しいですよね。そして生で食べるのが一番美味しいはずです。それを目指して、さらに生で食べるより美味しくできないかな、ということを1つの大きな願いとしてやってきました。

―ジャムの作り方というと、果物と砂糖と一緒にぐつぐつ煮込んで、煮込めば煮込むほど美味しくなるというイメージがありますが、御社の作り方は違う。

そうですね。フルーツでも野菜でも同じですが、なるべく低温かつ短時間で仕上がった方がおいしいジャムができます。そのためにどうすればいいか考えて作っています。


鮮やかな色。果肉がしっかり残るジャム。
デイリーフーズのこだわりは、これまでのジャムづくりの概念を打ち破る、新発想の製法にあります。それが高松さんが開発した「ジュール加熱製法」です。

仕組みは簡単。なんと、ジャムそのものに電気を流し、加熱してしまうのです。
素材そのものが熱くなるため均一な加熱が可能になり、加熱時間も従来製法の10分の1。鮮度も保てる新製法のジャムは、フルーツの生の風味や食感が特徴です。


―短時間でできるからこそ、フレッシュ感というか、あの果物のごろっとした食感が残るんですね。その実現のために開発された「ジュール製法」についてお伺いしたいのですが、そもそも「ジュール製法」というのはどんな作り方なんでしょうか。

簡単に言うと、通電加熱といいます。
要するに、果物そのものに電気を通します。昔の電気コンロでいうと、ニクロム線、つまり「抵抗」の役目を、フルーツや野菜がやるということです。

―中学校の授業でジュール熱を学ぶと思うんですが、抵抗がある物体に電気を流すと熱を発するという原理ですね。普通は、原理は分かっていても、ジャムを作るときにジュール熱を使おうなんて思わない。

発想のヒントは、昔ヒットしたパン焼き機の原型にあります。
誰が考えてそういうものを作ったのか知りませんが、たまたま終戦直後の昭和22、3年頃に、普通の家庭でも木の箱を使ったパン焼き機のようなものがあったんです。
小麦粉とヤギの乳や塩といったパンのもとを、ブリキ板を両側に設置した木の箱に入れ、そこに電気を流します。電気が流れると熱が発生して、本当にパンが焼けてしまうんですよね。

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(実際に通電加熱を見せていただきました)

それを思い出して、ああいうものでジャムができるんじゃないかと思ったんです。早速木の箱を作って両側をステンレスの板を挟み、その箱の中に普通のイチゴジャムを作るときの材料を入れ、100ボルトの電源を入れてみたら見事に煮立ってジャムができたんです。

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