2012.12.13 [■四季彩だより~信濃の国から~]
<VOL.209>四季彩だより~信濃の国から~
川の堤防を歩いて通勤する途中、シラサギが一羽、首を折りたたんでじっと水面をにらんでいる光景に出合い、思わず“足”しもやけにならないのかなぁ~と心配してしまいました。
いよいよ冬将軍が進軍してくる時期となってきました。
みなさんも温かくして、風邪などひかないように気をつけてください。
さて、今回は木曽地方に伝わる漬物の紹介です。
(すんき漬け)
(すんき漬けの材料となる黒瀬カブ)
冬の寒い日、暖かな“こたつ”に入ってお茶を飲み、漬物をつまみながら、よもやま話に花が咲く!光景が目に浮かぶのは私だけでしょうか・・・?
この時期の“お茶の友”として、また、ご飯のおかずとして欠かせないのが漬物。
信州の漬物と言えば、「野沢菜漬け」が有名ですが、今回の主役は、木曽地方に古くから伝わる「すんき漬け」で、単に「すんき」とも呼ばれています。
すんき漬けは、木曽御嶽山(きそおんたけさん)の山麓に広がる木曽町をはじめ、王滝村や木祖村を中心とした木曽地方の冬の食卓を彩る漬物です。
すんき漬けの一番の特徴は、漬け込みの際に“塩”を使わないこと。
一般的な漬物は、食塩を用いて漬け込みを行いますが、すんき漬けは、赤カブ(黒瀬カブ)菜を“乳酸菌発酵”させて作ります。
海から遠い山国であった木曽地方では「米は貸しても塩は貸せるな」と言葉があるくらい古くから塩は貴重なものであったため、野菜の保存に塩をふんだんに使用することができず、塩を使わない“無塩発酵”による漬物が作りだされたと言われています。
(木曽地方の冬の食卓を彩る)
すんき漬けの歴史は古く、約300年前に松尾芭蕉一門の連句会で門下生が詠んでいることや約150年前に御嶽登山を普及させた普寛行者の50年忌の席で「すんき料理」が出されたという古文書が発見されています。
すんき漬けに使う乳酸菌は、山ぶどうなどの果実を叩いて潰し、発酵させて作る家庭もあったそうですが、現在では冷凍・乾燥等で保存したすんき漬けを菌種として作る方法が主流となっています。
(すんき漬けがたっぷり入ったすんきそば)
乳酸菌で発酵させたすんき漬けには、独特の酸味があります。
塩漬けの漬物の味に慣れている口には、漬物とは思えない不思議な酸っぱさが最初は気になるかもしれませんが、醤油をたらしたり、削り節などをふりかけて食べると、なんともクセになりそうな
美味しさが残ります。
特にこれからの時期、温かいそばにたっぷりのすんき漬けが盛られた「すんきそば」は、必食!です。
最近の研究では、ヨーグルトに匹敵するほどの乳酸菌があるとも言われるなど、多様な植物性乳酸菌が豊富に含まれているため、健康食品としての効果が期待でき、ますます注目を集めていくのではないでしょうか。
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