2010.08.05 [■アレ☆これ☆信州]
Vol99■とく☆とく信州(週刊信州2周年記念連載)
素人蕎麦打ち名人の板倉副知事による連載
前号までは、お蕎麦の歴史について触れましたが、今週と次週は『蕎麦の特徴』についてお話しします。
<そばの特徴1>実の構造
蕎麦の実の大きさは、殻がついた状態で直径が大体5mm程度ありますが、その実を半分に割ってみると下の図のような構造になって、外側から殻(昔から枕の中身に使われています。)、次に甘皮、胚乳、胚芽という構造になっています。
「季刊そばの国だより(日穀製粉(株))」より
昨年秋に東京で開催された「ふるさと大信州市」でお蕎麦のうんちくを語る素人蕎麦打ち名人の板倉副知事
実の殻をはずしたものを丸ヌキと言い、通常はこの丸ヌキを石臼やロール機械で押しつぶして製粉するわけですが、最初に実が割れて粉になって出てくるのは、外側ではなく中心の部分からです。
この中心にある胚乳には、そばの色に影響する灰分がほとんどありません。つまり、色が白い「さらしな粉」と呼ばれるそば粉になるのです。
この粉を使うと、色が白くてほのかな風味をもつ繊細なお蕎麦が打ち上がります。一般に「更科そば」と呼ばれるものが、それです。
ちなみに、この更科の名称には、こんな所以があります。
1700年代の後半、信州で布を商っていた布屋太兵衛(ぬのやたへえ)は、蕎麦打ちの名人でもあり、当時、商売で出入りしていた江戸の保科家の殿様から勧められて蕎麦屋に転向しました。
その粉が信州の更級郡産の蕎麦粉を使っていたことから、更級郡の「更」に保科家から許された「科」の字を合わせて更科になったといわれています。
この店の人気商品が「御前そば」と言われる真白く上品なそばで、後にこれが更科そばと言われるようになったそうです。やがて「更科」は、「砂場」「藪」とともに蕎麦屋の三大屋号の一つとなりました。
白くて喉越しの良い更科そば
この中心に近い胚乳部の特徴として、「でんぷん」が多く含まれています。茹で上がったお蕎麦は、でんぷん独特の甘みや透明感、モチモチ感が楽しめます。
一方で蕎麦の実の外側、つまり、「甘皮」の部分を使うと、そば特有の色と強い香りがでます。いわゆる「田舎そば」と呼ばれるものは、この甘皮の部分を多く使ったもので、甘皮にはタンパク質が多く含まれています。
色が黒くて香りの強い蕎麦は、甘皮の部分を多く使っている。
江戸時代に流行し、今も一番食べられているのは、これらの中間に位置する「並そば」と言われるものです。そば屋さんに入って通常、「そば」を注文すると出てくるのがこの「並そば」です。
真白な胚乳、少し色のついた胚芽、そして場合によっては少しの甘皮、これらが適度にブレンドされたものが「並そば」というわけです。
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