2025.09.17 [ その他地域振興局食・農・旅農業改良普及センター農業農村支援センター ]
種子用コシヒカリの「ほ場審査」って?
こんにちは!上伊那農業農村支援センターの信州放牧豚です。
黄金色に染まった上伊那地域でも稲の刈取り作業が進んでいます。上伊那産の新米が店頭に並ぶ日が待ち遠しいです。
お米は、稲の穂の籾(もみ)からできていることは、みなさんご存知のことと思います。では、稲は、何から育ったのか?ご存知ですか。答えは、前年につくられた「籾(もみ)」です。昨年、種用に栽培された稲から採れた籾を保管しておき、農家さんは春にこの籾を購入して苗を育て稲作を行います。
種子用の稲は、病気を持っていない、しっかり芽が出るなど安定した品質でなければ、農家さんが安心して米作りできません。そのため、厳しい審査を何回かクリアし、「種子」として流通します。
今回、厳しい審査の一つ「ほ場審査」を品種「コシヒカリ」で行いましたので、その様子をお知らせします。

飯島町にあるJA上伊那南部カントリーエレベータと種子生産ほ場、白い看板が目印です
8月27日、飯島水稲採種部会が栽培している「コシヒカリ」のほ場34haを対象に第2回目のほ場審査を行いました。今回は、糊熟期(こじゅくき)※の審査です。上伊那農業農村支援センターでは、2人1組の6班体制で、34ha172筆のほ場を審査しました。
(※糊熟期(こじゅくき):作物の種子内部の生育段階において、種子の内部が糊(のり)状になる半成熟の時期。その他に乳熟期、黄熟期、完熟期などがある。)
■ ほ場審査とは?
種子として出荷される水稲が、基準を満たしているかどうかを確認するために、実際のほ場(田んぼ)で行う検査です。水稲の生育ステージの「出穂期」※と「糊熟期」の2回行い、今回は糊熟期の審査になります。種子の品質は、将来の米づくりの根幹を支えるものであり、審査はその信頼性を担保するために欠かせません。
(※出穂期:穂の約半数が茎の先端から現れる時期。品種によって田植から出穂期までの期間は異なる。)

ほ場には、種子生産ほ場である表示がされています。

種子審査員は、穂の高さに目線を合わせ、異系※の稲や揃いをチェックします。(※異系:栽培中の水田ほ場で、本来単一品種であるはずが「異なる特徴をもつ株」のこと。例えば、出穂が早すぎる、草丈が異常に長い、または短いなど)
■ 審査の方法
審査員は、ほ場に入り、以下のような項目を中心に確認を行います。
・品種の純度:他品種が混入していないか、異系はないか
・病害虫の有無:ばか苗病やいもち病、紋枯病など病気の発生状況
・生育状況:株の大きさ、葉色、穂の揃い具合など
・気象災害の有無:稲が倒れていないか
・栽培管理の適正さ:除草や水管理、防除の実施状況
これらの項目について、種子審査員が確認します。雑草の処理や今後の管理などもアドバイスも併せて行います。

審査員が協議し、チェック項目について確認します。
畦草までしっかり管理されているほ場 美しさを感じます
■ 審査の基準
審査では、長野県が定める「長野県主要農作物種子審査に係る基準及び方法」に基づき、以下のような基準が適用されます。
・変種、異品種又は異種類の農作物が混入していないこと
・雑草や病害虫などの発生が基準値以下であること
・栽培履歴が適切に記録されていること
・生育が均一で、品種特性が明確に現れていること
これらの基準を満たすことで、種子としての「信頼性」が確保されます。

異系の一種「斑入り」(葉や茎に白や黄色のスジが入ってしまう)
中央の稲は異系です。わかりますか?

漏生苗(ろうせいなえ)植えていないところに生えている稲

抜き取った異系等の稲は、看板の元へあつめます
■ 現地でのほ場審査を終えて
ほ場での審査が終わり、飯島水稲採種部会の役員の皆さまに、各班から生育状況、不良な管理状況の指摘、不合格ほ場の説明を行います。不合格となったほ場の稲は、一般の食用として流通します。ここでの指摘等は今後の管理や来年の種子生産に活かされます。飯島水稲採種部会では、地域の農業者が協力し、厳格な管理のもとで種子生産を行っており、今回の審査でも高い評価を得るほ場が多く見られました。

種子審査員から現地での審査結果の報告と今後の管理ポイントをアドバイスします
今回は、第2回(糊熟期)のほ場審査でしたが、この他に第1回(出穂期)にもほ場審査を行っています。今後、ロットごとにサンプリングした種子により生産物審査(吸水等の処理後、14日以内の発芽率を審査)を行い、合格すると令和7年産コシヒカリ種子として流通されます。
今回は「コシヒカリ」でしたが、「あきたこまち」、「ひとめぼれ」も飯島水稲採種部会で生産されており、同様に審査を行っています。そして、種子用の籾は、品質のそろった籾を生産するため、病害虫を発生させない管理、徹底した除草、異系の抜取りなど多くの労力を要するので、一般の主食用籾より高く買取られます。
また、上伊那管内では、大麦(品種「ファイバースノウ」)、小麦(「ハナチカラ」)、大豆(「ナカセンナリ」、「ギンレイ」)、ソバ(「桔梗13号」(しなの清流)、「信濃1号」)の種子が生産されており、県内でも有数な種子生産地となっています。
このような取組は、長野県の農業の未来を支えるとともに、地域の農業生産が安定し、消費者に安全な農産物を安定して届けることにつながっています。
皆さんが食べているご飯の向こうには、生産している農家さんがいて、またその向こうには、種子を生産している農家さんがいることも思っていただけるとうれしいです。
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