2016.03.19 [ 自然・山・花 ]
檀林の梅に 【井月さんのこころ158】
江戸時代の俳諧連歌(句)は、松永貞徳によって大成された「貞門派」が栄え、その後に西山宗因による「檀林派」が新風を興し、その影響を受けた松尾芭蕉を宗匠とする「蕉風」へと受け継がれていきますが、発句のみを独立させた現代の俳句と違って、一定のルールの下に大勢で創りあげる掛け合いの言の葉文化でありました。
この連句の伝統文化は、明治時代に「写生」の発句のみを重んじた正岡子規によって壊されてしまったものと考えられますが、井月さんの時代までは盛んであり、連句の付け合いが非常に早くて上手いとされた井月さんなのでした。
さて、『井月さんのこころ』も満3年を経過し、竹入弘元先生の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から評釈を引用させていただきながら数多くの井月さんの句を紹介してまいりました。
まだ紹介していない評釈は少なくなりました。この句は、句のみ遡回その9に載せてありましたが……。
春の野で、井月さんは詠みます。
菜の花に遠く見ゆるや山の雪 井月
この句の評釈について、井上井月研究者である竹入弘元氏の「井月の魅力 その俳句鑑賞」(ほおずき書籍)から引用させていただくと・・・、
伊那は東西に山脈がそびえ、間を天竜川が貫流する。寒かった季節も漸く過ぎ、菜の花が咲くうららかさ。遠くの山々にはまだ雪が真っ白で、朝には西駒ケ岳に、夕には東駒ケ岳に日が当たって神々しいまでに美しい。伊那市は一九九六年三峰川両岸サイクリングロードに井月句碑を一〇基建立した。この句の碑は右岸に立つ。
(菜の花・春)
所長室の窓から東西二つのアルプスやその間を流れる天竜川を眺められるのもあと僅かとなりました。
梅が香を吹きよこす風伊那に満つ 青巒
寝覚めにつれて檀林の夢 朴翆
春日愚良子先生の自在な句ごころにも学ばせていただきながら紹介してまいりました。
遡回その105の再掲になりますが、今週の結びは、愚良子先生のこの句です。
「春日愚良子句集」から
春暁よ目覚めなくても目覚めても 愚良子
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