皆さんこんにちは!農地整備課の猫が好きです。
皆さんは、「水利権」を知っていますでしょうか。
水利権とは、河川から水を取る権利のことです。河川から好き勝手に水を取ってしまうと、下流で水がなくなってしまうことがあります。そうならないために、河川の水を利用する組織ごとに取水量の上限が定められているのです。
たいていの場合、取水された水は、農業・発電等に利用されたのち同じ河川へ戻されます。しかし、そうはならないものがこの伊那にはあるのです。
江戸時代、現在の伊那市における上戸(あがっと)と、中条の集落は、伊那谷にありながら、松本藩の所領であったため(伊那谷は高遠藩の所領)、周辺の河川から取水をする権利がなく田を作ることができませんでした。集落の人々は、享保15年(1730年)頃から周辺河川からの取水を許すことを訴えたが、140年ほどたった明治2年(1869年)になっても、聞き入れられることはありませんでした。しかし、明治4年(1871年)廃藩置県により筑摩県が誕生すると、権兵衛峠を越えて木曽から水を持ってくる計画が始動しました。
そうして作られたのが、木曾山用水です。完成当初は、白川(奈良井川の支流)より取水し、権兵衛峠を介して牛蒡沢(天竜川の支流)へ放流する水路でしたが、度重なる災害により一部を隧道としたうえで、水路の付け替えを行う工事が行われました。流路に関しては、下の図をご覧ください。
この用水について、ある特徴があります。奈良井川の水を天竜川へ移しているという点です。本来であれば、日本海へ注ぐ水を、太平洋へ注ぐようにしているのです。調べた限りでは、福島県の安積疏水という用水も同じ特徴をもっています。
権兵衛峠を越えて、険しい林道を進んでいきます。途中、伊那市のS平係長運転の車がパンクする事故もありましたが、目的地へ到着することができました。
水枡とは、下の図のものになります。
奈良井川土地改良区と、上戸中条水利組合の間で協定が結ばれており、取水できる量が定められています。コの字型の木の枠を超えた水は、図2の手前側・図3の左側へ溢れてしまうため、決められた水量以上は取水できない仕組みです。(溢れた水は、奈良井川の水系へ戻っていきます)水枡から溢れなかった水は、隧道(図4)を通って伊那谷へ向かいます。この木の枠が定められた基準を満たしているかを確認するのが、水枡検査です。水枡の深さは、約10㎝で幅の広い雨どいのような構造です。
今年の検査も無事に終了し、基準を満たしていることが確認されました。
林道の入り口には、ゲートがあり普段は施錠されているため立ち入りはできません。
年に1度の水枡検査。伊那にいるうちに貴重な体験ができました。
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