信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

創業明治17年 今なお進化する「100年企業」

「新・信州魅力人」では、メイドイン信州のすごいものづくり技術や匠の技をご紹介し、ものづくりを支える起業人たちの魅力に迫っています。
3回目は、創業明治17年。堂々たる“100年企業”羽生田鉄工所の羽生田豪太社長をご紹介します。
経済学の教科書には「企業の寿命は30年」などと書かれていますが、なぜ1世紀にわたって発展し、新しい未来を開拓することができるのでしょうか?



100年間選ばれ続ける理由は「信頼」

―現在、羽生田鉄工所で作られている主力商品はどんな商品ですか?

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最も売り上げが多いのは、きのこ生産でつかわれる殺菌装置です。長野県はきのこ産業の発祥の地ともいわれ、生産も盛んです。県内はもちろん、北海道から沖縄まで日本中のお客様に、きのこ生産用の殺菌装置を提供しています。

―殺菌装置には、御社のコア技術である圧力容器が使われているのですか?

そうですね。元々は50年ほど前、農協からの依頼をきっかけにスタートしました。
圧力容器の中でないと飽和蒸気を使って殺菌ができませんので、どうしても圧力容器が必要になるのです。

―100年間、御社の製品が選ばれ続ける理由は?

50年前に長野県できのこ産業が始まり、一時的にたくさんのメーカーが生まれましたが、生まれては消えていきました。その中で残ることができたのは、技術だけでないと思っています。しっかりとしたものをつくっている「信頼」が大事だったと思います。

羽生田鉄工所は農具の鍛冶屋からスタートしました。その後、溶接の技術を活かして蚕糸などのボイラーや、みそ用の大豆を蒸す大型の釜で業績を伸ばします。
現在の主力製品は、きのこ生産の菌床殺菌用の圧力容器、高圧殺菌釜。
農具、製糸、みそ、きのこ…まさに長野県の地域の産業を支えているものづくり企業です。

100年間進化を続ける長野県企業

―羽生田鉄工所というと、「ボイラーの羽生田」をイメージされる方も多いかと思いますが。

私たちは、金属の溶接技術にこだわっています。
以前は、全部を溶接で作ったボイラーも主力商品の一つでした。かつては「ボイラーの羽生田」と看板で出していましたが、実はボイラーはここ10年以上作ってないです。

―そういう意味で、羽生田鉄工所の業態は100年の間にどんどん進化しているのですね。

お客さんが求めるものを追求していくのが商売だと思います。
長野県でも盛んだった蚕糸産業は、繭玉から生糸をとっていく過程で蒸気が必要です。だから、ボイラーはどんどん売れました。
生糸を織るときにも蒸気が必要、それを染物にして機を織るときにも蒸気が必要。全国にも一時的にボイラーメーカーがたくさんできたのですが、産業が衰退すると、弊社も含めてボイラー生産を縮小していったのです。

蚕糸産業の次に来たのが、きのこの栽培でした。また、信州はみそ製造も盛んです。
それにあわせて、きのこを中心とした圧力容器、殺菌装置、また大豆の圧力蒸し釜などにシフトしました。長野県をはじめ、全国のお味噌屋さんにも豆を加圧して蒸す製品を納めさせてもらいました。
現在、主力となっているのはこのような食品の殺菌装置です。

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―主力の圧力容器。「これからの100年」未来についてはどうお考えですか?

たとえば、スマートフォン。液晶パネルを作るときにフィルムとパネルの間を加圧して空気を抜くものを加圧脱法装置というのですが、それも圧力容器の一つです。
また、半導体を作るときにも真空にしたり加圧したりというプロセスがあります。

トレンドはどんどん変わります。あたらしい装置を開発する方々もいますので、そういう所との連携によって、自分たちの技術が生かされればと思います。

―羽生田鉄工所では、ボーイング787にも採用されている未来の素材「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」の製造装置をつくっていますよね?

そうですね。2003年ごろから調査を始め、2006年ごろから製品化しました。

―この製品も、加圧という基本的な技術は同じで、窯にプラスチック樹脂に浸したカーボンを入れて、それに圧力を加えて熱を加えて焼くということですか?

そうです。加圧加熱硬化といいます。

―CFRP(炭素繊維強化プラスチック)は、東京モーターショーでも話題になりましたが、狙いは初めから自動車産業だったのですか?

狙っていたのは飛行機です。
飛行機に使われると当然他の産業にも流れていきますからね。電車に使われたり車に使われたりということが、いずれくるだろうと思っていました。ただ、今は高価であることや生産プロセスの開発段階ですので、どういうスピードで転用されていくのかは分かりません。

―他の分野へ目を向けられたのは、今後、既存のきのこ用の圧力容器は、市場の伸びが期待できないからでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。むしろ逆です。
きのこに関しては、転換点がどこかで起きて、まったく新しい栽培方法が確立すれば、ボイラーと同じように必要なくなるかも知れません。しかし、今のところその気配はない。むしろ、市場は広がると思います。日本国内だけではなく、海外でも施設栽培が似たようなプロセスで進んでいますので。

ただ、きのこも、大豆の蒸し釜についても、簡単に壊れない。
パッキンやバルブを取り替えるだけで、30年くらい持ちます。だから、簡単に買替え需要を期待するわけにはいきません。

だからこそ新しい分野への挑戦も必要です。
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の製品はそのひとつ。将来的には、もちろん柱の一つにしていくつもりでやっていますが、どのくらいの規模になるかはまだ分からない。

―日本のきのこ生産システムが世界に広がれば、ビジネスチャンスも世界へ広がっていきますね。

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やはり今は中国。きのこの施設栽培が、ものすごいスピードで進んでいるんです。当然のことながら、そこへ供給していく装置メーカーも地元でどんどん生まれている。技術力の差はあるかもしれないが、コストの差がすごくあるので、その中でうまくビジネスができないか考えます。スピード感が重要なんです。
もともとは日本の技術ですから、そのアドバンテージを、弊社のみならず、きのこに関わる業者たちが生かして、世界中に日本の技術を広げていければいいと思います。

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