2012.01.25 [羽生田鉄工所(長野市)代表取締役 羽生田豪太さん]
創業明治17年 今なお進化する「100年企業」
―羽生田鉄工所では、ボーイング787にも採用されている未来の素材「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」の製造装置をつくっていますよね?
そうですね。2003年ごろから調査を始め、2006年ごろから製品化しました。
―この製品も、加圧という基本的な技術は同じで、窯にプラスチック樹脂に浸したカーボンを入れて、それに圧力を加えて熱を加えて焼くということですか?
そうです。加圧加熱硬化といいます。
―CFRP(炭素繊維強化プラスチック)は、東京モーターショーでも話題になりましたが、狙いは初めから自動車産業だったのですか?
狙っていたのは飛行機です。
飛行機に使われると当然他の産業にも流れていきますからね。電車に使われたり車に使われたりということが、いずれくるだろうと思っていました。ただ、今は高価であることや生産プロセスの開発段階ですので、どういうスピードで転用されていくのかは分かりません。
―他の分野へ目を向けられたのは、今後、既存のきのこ用の圧力容器は、市場の伸びが期待できないからでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。むしろ逆です。
きのこに関しては、転換点がどこかで起きて、まったく新しい栽培方法が確立すれば、ボイラーと同じように必要なくなるかも知れません。しかし、今のところその気配はない。むしろ、市場は広がると思います。日本国内だけではなく、海外でも施設栽培が似たようなプロセスで進んでいますので。
ただ、きのこも、大豆の蒸し釜についても、簡単に壊れない。
パッキンやバルブを取り替えるだけで、30年くらい持ちます。だから、簡単に買替え需要を期待するわけにはいきません。
だからこそ新しい分野への挑戦も必要です。
CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の製品はそのひとつ。将来的には、もちろん柱の一つにしていくつもりでやっていますが、どのくらいの規模になるかはまだ分からない。
―日本のきのこ生産システムが世界に広がれば、ビジネスチャンスも世界へ広がっていきますね。
やはり今は中国。きのこの施設栽培が、ものすごいスピードで進んでいるんです。当然のことながら、そこへ供給していく装置メーカーも地元でどんどん生まれている。技術力の差はあるかもしれないが、コストの差がすごくあるので、その中でうまくビジネスができないか考えます。スピード感が重要なんです。
もともとは日本の技術ですから、そのアドバンテージを、弊社のみならず、きのこに関わる業者たちが生かして、世界中に日本の技術を広げていければいいと思います。