2014.04.07 [ 信州大自然紀行環境保全研究所飯綱庁舎 ]
矢出川遺跡~旧石器の人々の拠点~
八ヶ岳連峰の南東麓に、野辺山原があります。ここは八ヶ岳火山の裾野の火山麓扇状地です。最寄りの小海線野辺山駅(標高1346m)は、JR最高所の駅として有名です。夏は爽やかな避暑地になりますが、冬は八ヶ岳おろしの寒風が吹くきびしい環境です。ちょうど1ヶ月前の3月7日には、マイナス25.3℃という最低気温を記録しました。ここが本格的に開拓されたのは戦後まもない頃からで、大変な苦闘の末、今では日本の高原野菜の一大生産地になっています。
さて、この高原一帯には、後期旧石器時代の遺跡がたくさん知られています。中でも野辺山駅の近くにある矢出川遺跡は、日本の細石刃文化が国内で初めて確認された記念すべき場所で、現在国指定の史跡になっています。
細石刃というのは、下の写真にあるように核となる石から長さ1~2㎝、幅数㎜ほどにはぎ取られたとても小さな石器のことで、その石器をカミソリの替え刃のように獣骨製の柄に複数埋め込んで使用したと考えられています。これは、組み合わせ道具の制作という意味で大きな技術革新で、人類史上のひとつの変革期に相当するとされています。氷河期の終わりに近い1万4千年前の頃、ここは当時の人々の拠点になっていたようです。その理由として考えられるのは、すぐ近くに八ヶ岳や霧ヶ峰産の高品質の石器素材(黒曜石)があったということ。それから、ここが信州と甲州(~関東)の境に位置するというわかりやすい立地。あるいは、当時疎林と湿地が点在する狩りに適したと思われる環境があったこともその要因のひとつかもしれません。
遺跡を訪ねるには、右の写真の国道141号線沿いにある南牧村美術民俗資料館に立ち寄り、事前に情報を仕入れることをおすすめします。受付におられる地元在住のNさんが、遺跡や遺物にまつわる話を楽しく教えてくれます。資料館から遺跡までの案内図も入手できます。ただし3月半ばのその日、案内図片手に遺跡を目指したものの、すぐにはみつかりませんでした。雪に覆われた広大な火山麓では、遺跡の看板と碑をさがすだけでも少々苦労を要します。
~ 春をまつ 雪の大地に たからもの ~
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