自然と遊ぼう!ネイチャーツアー

~自然に触れる、学ぶ、そして守る~ 自然環境や生物多様性、自然体験型ツアーについての情報をお届けします。

名勝天龍峡(南信州のポットホール2)

 南信州のポットホールの紹介(その2)です。
飯田市天龍峡の右岸にある第三公園の一角にも形のよいポットホール(甌穴:おうけつ)があります。前回の売木川のものとの大きな違いは、これが天竜川の河床からはるか50mほども高い山の上にあるということです。天竜川の川底で出来たはずのポットホールが近くのこんなに高い場所にあるというのが見どころです。それは、このポットホールの形成後に大地が急激に隆起をしたことの証拠です。同時に、天竜川がその隆起に負けずに近くを流れ続けてきたことの証拠でもあります。天竜川はおそらく数万年の時間をかけ、ときおり流路を変えながらも、天竜峡花崗岩と呼ばれる堅い岩盤を50m以上も深く削り込んできたと考えられます。この直径70㎝ほどのポットホールには水がたまっており、それをつけるとイボが治るといわれ、”いぼ神様”として大事に祀られています。



 天龍峡は深い渓谷と荒々しい流れが魅力です。梅雨空の下では、緑の谷の底で濁り水が不気味に渦をまいていました。上流部の伊那谷の穏やかな地形と流れが、ここに来て突然別世界のような渓谷に変わり、しぶきをあびるような船下りの醍醐味を楽しめるというのは、この地の激しい地殻変動と川の力のたまものといっていいでしょう。



 天龍峡が国の名勝として文化財に指定されたのは昭和9年(1934年)のことです。けれども、すでに江戸時代後期の頃から多くの文人墨客がこの地を訪れ、特異な風光に遊び、たくさんの詩や言葉を残しています。ここには、そういった昔からの観光地としての歴史と風情が残されていて、大自然の歴史と同時に旅の文化の移り変わりを実感することができます。両岸の切り立った岩壁の上にはぐるりと遊歩道が整備されていて、渓谷をのぞきながらの散策も楽しめます。吊り橋を渡るとき、眼下の水面すれすれに飛ぶツバメの姿が印象的でした。

  ~てんりゅうの さかまく渦につばくらは なめらかな弧を ひとりたのしむ~

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