2013.02.13 [ 信州大自然紀行環境保全研究所飯綱庁舎 ]
上高地(自然史その1)
標高1500mの上高地。
ここは長野県が誇る、いや日本が世界に誇る風光明媚な観光地です。
険しい山岳と、大きく開けた扇状地と、森と川と、爽やかな空気に満ちた、まさに神の高地(河内)といえるような場所。飛騨山脈(北アルプス)の奥深くに、なぜこんなに静かな広々とした扇状地があるのか・・・そんな不思議を考えたことはないでしょうか?
じつは険しい山の奥にあるからこそ、広大な河原ができた、ともいえます。ん? どういうことかというと、上高地盆地が出来た背景には、日本一険しい山岳の中心部にかつて深い谷があり、それが一気にせき止められて巨大な湖ができたという大事件があります。信州大学のH博士らの研究によれば、谷をせき止めたのは、今から5000年以上も前の焼岳火山群の活動であったとのこと。黒部湖の15倍もの大きさがあったとされる当時の湖は、周辺の山々から押し寄せる土砂でどんどん埋められて、やがて広い扇状地になったというわけです。そして火山活動は現在の焼岳やアカンダナ山の活動に続いています。1915年(大正4年)に焼岳が噴火して梓川を堰き止め、大正池が出来たという事件は有名ですが、それ以前の巨大な湖形成と埋め立ての歴史からすれば、それはごく最近のほんの小さな出来事ともいえるものです。
その大正池も焼岳から押し寄せる土砂によって埋め立てられつつあり、観光シーズンが終わりになる晩秋には、右の写真のように池の上に浚渫船が浮かびます。
美しい湖が突然生まれては、また消えてゆく。そういう自然の力が、名勝上高地をつくってきたといえます。大きな風景には、大きな歴史が隠されている。そんなことを思いながら散策すれば、上高地はさらに魅力的な場所になることでしょう。
~ 山ねむる 今は昔といひながら ~
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