今回の地域知恵袋インタビューは、木曽漆器工業協同組合 理事長 宮原 正さんです。
木曽漆器工業協同組合は、漆器の製造販売に関わる組合員135者で構成され、伝統的工芸品「木曽漆器」の産地の発展に取り組んでいます。従事者は、約580人その内50人が「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(通称 伝産法)」に基づく伝統工芸士の認定を受けています。
理事長さんに、木曽漆器の歴史と最近の取り組みなどを伺いました。
◎木曽漆器の歴史と特徴について教えてください。
旧木曽郡楢川村とその周辺に伝わる漆器で、江戸時代の中期に、中山道を往来する旅人などを相手に、ヒノキ、カツラ、トチなどを材料とする曲物(まげもの)、ろくろ細工、櫛(くし)などの日常雑器を作り始めたもので、旅人により江戸や京都などに運ばれ、全国的に広めていったといわれています。
木曽漆器が特に有名になったのは、明治初期に地元で発見された下地材である「錆土(さびつち)」を用いて、堅牢な漆器が作られたためです。なお、1949年(昭和24年)に重要漆工団地、1975年(昭和50年)には、国(経済産業省)の伝統的工芸品に指定されました。
○木曽春慶(きそしゅんけい)
木材料に下地付けを行わないで漆を塗り、最後に透明度のある漆を塗る技法。
○木曽堆朱(きそついしゅ)
幾層(十数回)もの色漆を塗り込み、研ぎ出しにより斑模様を表現する技法。
○塗分呂色塗(ぬりわけろいろぬり)
数種類の色漆により模様を施した後、丹念に艶出しをする技法。
◎現状の課題等はありますか。
木曽漆器の課題は、2つあります。1つは、日常生活で使われず漆器の生産や販売が増えないのが課題となっています。理由として、木曽漆器は、一般的に値段が高くて洗浄などの扱いにも気を使うものと思われているのではないでしょうか。
値段については、職人が1つ1つ手作りしていますので、どうしてもある程度の値段になってしまいますが、手触りや質感は優れていますので、そういった商品の特徴をご理解していただきたいと思います。
もう一つの課題として、職人の高齢化や新たな職人の成り手が少ないということで、人材の創出と育成については、市内に塩尻市木曽高等漆芸学院(県認定職業訓練校)があり、現在約40名の生徒が木曽漆器技術、漆塗り全般を学んでいます。彼らが、技術を習得し新たな職人として地域の事業所で働くことで、伝統工芸技術の伝承や木曽漆器産業の発展につながるものではないかと期待しているところです。
◎木曽漆器のブランド力アップについて教えてください
平成11年ごろ旧楢川村の小学校では児童の給食用の食器として導入する取り組みをしていただき、子供の頃から地域の産品を知り、物を大切にする心を醸成するなど、情操教育を図ってきたと思います。現在は塩尻市内小中学校全校で木曽漆器のオリジナルの箸で給食をとっています。
また、昔ながらの伝統的な漆器のほかに、現代の生活様式にマッチしたデザイン性の高い漆器を作製し、東京都内の展示会への出展や器類以外の製品開発として、記念メダルやネームプレートなど新たな商品にも漆の用途を広げています。
更に、木曽漆器の技術を活かして、文化財修復事業として県内外の建造物・山車・舞台・神社仏閣・美術工芸品など様々な修理修復事業に参画しています。今後さらに、多くの実績を積み重ねることで知名度アップを図り、結果としてブランド力の向上につなげてまいりたいと思います。
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