2023.05.19 [ 歴史・祭・暮らし ]
中尾歌舞伎
三峰川とそこに合流する黒川に挟まれて、伊那市長谷の中尾集落があります。ここに、伝統文化保存伝承施設「中尾座」という立派な建物があります。後ろには、南アルプスの鋸岳の峨々たる勇姿が聳えるのが見えます。
2023年4月29日(木)には、この中尾座がとても賑わいました。
この日に、中尾歌舞伎の定期公演があったのです。
コロナ禍で4年振りとなった今年の公演には、200名ほどのファンがつめかけました。
今年の演目は「人情噺 文七元結(にんじょうばなし ぶんしちもっとい)」です。
パンフレットにより、あらすじを記すと・・・
長兵衛は、腕のたつ、そして人のいい左官職人。ただ、酒と博打が好きで、いつも貧乏をしてます。(一幕目)
娘のお久が、窮状を見かねて自ら吉原の「角海老」という店に身売りをしました。
「角海老」の女将はそのお久の心根を誉めて、期間を決めその間に返せばお久に客を取らすことなはないという約束で、長兵衛に50両を貸します。(二幕目)
ところがその帰りに長兵衛は、文七という男が川に飛び込もうとしている現場に出くわします。聞くと、店の金50両を紛失したとのこと。
自分の借りた金を文七に渡すか、迷いに迷う長兵衛・・・・・・・そして・・・・・。(三幕目)
(以下 四幕目)
というお話ですが、歌舞伎ばかりか落語にもあるので、その後はご存じの方も多いかと思います。
役を演ずるのは地元のみなさんを中心に、応援団もいる様です。女性もいます。
その言葉と演技で、会場の観客の気持ちが一つになるのがわかります。思わず笑いが広がったり、緊張がはしったり。
これを、名演技というのでしょう。
そして、名演技にはかけ声と「おひねり」が飛びます。
普段、芝居や歌舞伎など観ない野暮で無粋な私でも、十分に堪能できました。
中尾歌舞伎は、江戸時代の明和4年(1767年)に中尾地区に来た旅芸人が演じたのが始まりと伝えられているそうです。
戦争や過疎などにより途絶えていましたが、中尾歌舞伎保存会が組織され、紆余曲折の末、平成30年に復活したものだそうです。
立派な中尾座が建つ前は、神明社という神社の境内で演じられていたのだそうです。
いつまでも続けてほしいものです。
なお、伊那市創造館では、企画展「中尾歌舞伎」が開催されております。(令和5年6月26日(月)まで)
最後に、引幕に描かれているのは六歌仙。優雅に活き活きと色彩が見事です。慶応元年(1865年)と記されており、幕末に中尾地区の住民がお金を出し合い作成したもので、中尾歌舞伎のシンボル的な存在です。
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