信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

ブナ林×大学准教授 vol.1

ヨーロッパブナ林(ドイツ)にて

今回の話は「ブナ林」。
ブナは、標高1000~1500メートルという山地に生育し、国内でも広く分布しています。雪に強い特性を活かし、県内では飯山市や栄村、野沢温泉村など北信地域によく見られます。
「実は北信州の森は、ブナだらけ。体積の9割を占めるんです」と話すのは、信州大学教育学部の井田秀行准教授。ブナの面白さ、そして森の楽しみ方を教えてください!

「森は生きている」-現場で実感し、芽生えた愛情

- 北信地域にはブナが多いと聞きました。

雪の多いところはブナも多いので、県内全域にありますが、特に飯山や栄村など北信地域には多いですね。ブナが雪に強いというよりは、他の植物が大きく育たないのでブナが残って、結果的にブナ林になるんです。

カヤの平高原のブナ林(木島平村)

- 他の植物と比べて、寒さに強いってことですか?

寒さに強いというわけではなくて、上から掛かる力に強い。つまり、雪の重みに負けないんですね。若いうちは地面に這うようになっていて、春になって雪が溶けるとボンッと起き上がる。春先のブナ林は気をつけないと危険です。

新緑のブナ

- 雪が積もっても折れないんですね。

他の木は曲がらなくて折れてしまうんですが、ブナはしなやかに対応できるから生き延びたのかもしれません。成長して、ある程度の太さになると直立するようになっていきます。

- ブナにそんな性質があるとはビックリです。研究は、いつごろから?

始めたのは、大学時代です。自然に関わる仕事がしたいと思っていたので、大学に進むときには、林学などをやりたいなあ…と。当時はちょうどバブル時代だったんですが、その流れとは逆の、割と泥臭い感じですね。大学の授業でも、実習が楽しくて。部屋の中で勉強しているよりも、どこか外に出掛けることが好きでした。

- 数ある植物の中で、なんでブナを?

それはもうちょっとさかのぼるんですが…実は高校生までは「鉄道オタク」だったんです。中学生のころ、「青春18キップ」を使って北海道まで行って、1週間ほど駅で寝泊まりしながら旅をしました。今、思えばよく親が許したと思いますけど(笑)。それがきっかけで北海道の、雄大な景色やキリッとした寒さが好きになって。最初は大学でも、高山植物を研究対象にしたいと考えていたんです。先生に相談したら、「とりあえず行ける範囲で一番寒いところの植物の研究をしなさい」と言われて。当時は広島にいたんですが、一番寒いところっていうと、山の上。そこにブナ林があったんです。

- それでブナの研究を。

実は、卒業後は北海道へ行って高山植物の研究をするつもりでした。でも、ブナを研究し始めたら、面白くなってきてしまって。それでそのまま、ブナの研究を続けています。

- ブナの面白さって、どんなところですか?

研究対象に愛着がわくというのは、たぶん多くの研究者がそうなんだと思います。種が芽生えて、成長して、大きいブナの木になって…森も数百年単位で動いている、生きているんだと現場で感じると、愛情が生まれるんですよね。どこがいいのか、って言われると明確には答えられないんですけど。

- 研究って、具体的にはどんなことをしているんですか?

森の中のブナの分布や密度、他の木との兼ね合いなどを調べています。木に目印を付けて毎年測ったり、種や葉っぱを集めたり。

- 結構、地道ですね…。

雪が降ると寒いし、「何で俺、こんなところでこんなことやってるんだろう」ってときどき思います(苦笑)。今は、人工衛星や衛星データを使って調べることもできるようになってきましたが、やっぱり現場に行くことでいろいろ感じるものがあるんですよね。データや写真を見ているだけじゃ思い付かないようなひらめきが生まれたりするので。

- やっぱり、外が好きなんですね。

森の中では、脳が活性化するような気がします。とはいえ、論文にして学会などで発表するのも仕事の一つなので机にも向かわないといけないんですが、でも、正直に言えばずっと現場にいたいです(笑)。


できることなら森の中にずっといたいという井田さん。大学院でもブナの研究を続け、その後、就職に伴い長野県へやってきました。縁もゆかりもなかったという信州へのIターン。そこから研究は、さらに深く、広くなっていきます。

PROFILE
1968年、名古屋市生まれ。広島大学大学院生物圏科学研究科修了。1996年に長野県に移住し、長野県自然保護研究所へ。2000年から信州大学教育学部で教鞭をとる。専門は森林生態学で、森林動態の研究や里山の保全と活用にも取り組む。現在は飯山市で、家族と共に古民家で暮らす。

LINEで送る

このブログのトップへ