2013.11.01 [ 南信州の伝統・文化・史跡 ]
飯田城下を往く ④飯田弁
これまでお寺や山、並木を取り上げてきましたので、今回は無形のもの「飯田・下伊那の言葉」(ここでは便宜上「飯田弁」とします。)について触れてみたいと思います。ブログにはちょっと不向きかもしれませんね。
私は飯田で生まれ飯田で育ったネイティブなので、随分と長いこと「飯田や下伊那に方言なんかないらぁ」「ワシらは標準語をしゃべっとるにぃ」というとんでもない確信を持っておりました。
ある時、飯田・下伊那こそ方言の宝庫、ここの人はほぼ方言でしかしゃべれないという事実に気づかされ、愕然としたものでございます。
飯田弁はそれこそ無尽蔵にありますが、ここではいくつかの代表的な言葉を取り上げてみたいと思います。
【なぁにぃ言語圏】
飯田弁の一番の特徴は語尾にあります。
「・・なぁ」「・・にぃ」がその代表格です。
「・・なぁ」は「・・ね」、「・・にぃ」は「・・ですよ」ぐらいの意。
「な」「に」と切るのではなく、小さな「ぁ」「ぃ」が付く感じ。
たいへんによく使われます。この地方は「なぁにぃ言語圏」にあると言ってよいでしょう。
「・・らぁ?」もよく使います。「・・ですよね?」の意。豊橋や浜松の人も使っていて、言語の来し方を考えるとちょっと面白いですね。
〇使用例「あんなぁ、Mさんがやってみぃって勧めるもんでなぁ、やってみたんだにぃ。知っとるらぁ?」
〇口語訳「あのね、Mさんがやってみたらって勧めるからね、やってみたんだよ。知ってるよね?」
【あ行】
「おあがりて」
「玄関から家の中に上がってください」の意と「どうぞ食べてください」の意の2つの意。
よそ様の家にお邪魔して、「おあがりて」攻撃に抗しきれず満腹になることがまゝあります。
【か行】
「きぶる」
「機嫌を損ねへそを曲げる」の意。
〇使用例「課長がきぶって、口も聞いてくれんのなぁ」
【さ行】
「ささらほうさら」
「いろんなことが同時多発的に起こって混乱の極みにある」様
〇使用例「3時から会議だし、この書類は今日中にまとめろって言うし、もうささらほうさらだにぃ」
宮部みゆきさんが甲州の方言として『桜ほうさら』のなかで紹介していますが、飯田でも使います。全県的にも使いますかね?
宮部さんは「美しい言葉」と言っていますが、必ずしもそうではないかも・・・
【た行】
「だだくさまもない」
「量り知ることができないほどたくさん」の意
〇使用例「合庁へ行ったら、だだくさまもねぇほど書類を持たされたにぃ」
【な行】
「ねやねや」
「人が群れ賑やかく活気がある」様
〇使用例「昨日は『りんごん』で飯田の街はねやねやだったにぃ」
【りんごんで街はねやねや、アルクマはモテモテ】⇒
【は行】
「はれっ」「ほいっ」
感嘆詞。「はれっ」は「あれまぁ」、「ほいっ」は「ねぇちょっと」って感じかな?
〇使用例「りんごん」の掛け声に「りんごん、りんごん、ほいっおいな」とあります。北信出身のコに「ほいっおいな」ってわかる?と聞くと「Hey Come-On」の意味ですか?のお答え。大正解!
【ま行】
「みやましい」
「大変立派で晴れがましい」様
〇使用例「はれっ、成人式だもんでみやましいなぁ」
【や行】
「やらしい」
「嫌らしい」「いけ好かない」の意。方言でないようで多分方言。100%嫌がってはいないニュアンスで使います。
〇使用例「はれっ、やらしいなぁ」
【ら行】
「らんごく」
字を当てれば「乱極」か?
「何も片付けられず散らかっている」様
〇使用例「部屋の中はらんごくなんちゅうもんじゃぁないにぃ」
どうでしょう?微妙なニュアンス伝わりましたか?
標準語に直すと、味も素っ気も身も蓋もない感じになってしまいますが、こんな感じで私たちは毎日、方言とも知らずに「なぁ」とか「にぃ」とか言いながら暮らしています。
なお、イラストでの特別出演は豊丘村の「リンゴ村長」でした。御出演ありがとうございました。
<地域政策課>
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