2016.03.16 [株式会社ヤマテン 代表取締役 猪熊隆之さん]
山×気象予報士 vol.2
- 病気がきっかけで、気象予報士の道へ進んだんですね。
それまでずっと山一筋できたので、目標が急になくなって、心にぽっかり穴が開いたようになりました。何か新しいことをスタートさせないといけない、ある程度大きな目標があれば頑張れる、と思いました。実際、試験勉強はすごく支えになりました。入院すると、勉強する時間はたくさんありましたし。それで、無事に合格できたんです。
- “山岳”気象予報士となったのは?
慢性骨髄炎を発症してからは、登山に登れなくなった自分を直視したくなくて、山から自分を遠ざけようとしました。山の話を聞くだけで、辛くなるからです。あるとき、山岳部のコーチも辞めようと思って、コーチ会へ行ったんです。そうしたら、何かすごく居心地が良くて。辞めるつもりで行ったのに、家族に囲まれているような暖かい気持ちになって、ここを離れてはいけないんじゃないかと感じたんです。
- 以前も感じた、猪熊さんの「居場所」なんですね。
迷う中で、ふと、自分は今まで山から多くのものをもらってきたと気付きました。肉体的、精神的な成長、素晴らしい仲間、そしてこれまで見てきた大自然の風景。そう思ったら、登れないから山から遠ざかるというのは、なんてバカなんだろうと。登れなくても、できることはたくさんあるんですよ。
ヤマテン事務所から夕陽に染まる八ヶ岳
- そこで“山岳”気象予報士に。
ビジネスとしてやっている人はいないと思いました。だったら、マーケットとして可能性はある。どのくらいいい予報が出せるかは分かりませんが、登山をここまでやっている気象予報士は日本にはいないだろうと思いました。
- 山への恩返し、だったんですね。
これまでも、天気で痛い目にあったこともありますし、富士山の事故だって突風が原因なので。山の天気予報を出すことが、登山者の安全につながっていくのではないかと思いました。
山岳気象予報士という道を模索し始めた猪熊さん。ちょうどそのころ、日本人初の8000メートル峰全14座の登頂者である登山家・竹内洋岳さんと病院で(!)再会し、エベレスト登頂の際の予報を出すことになります。「海外は想定外で、難しくてできるかどうか分からなかったんですが、面白いと思ったので」と猪熊さん。結果、予報は的中。メディアで取り上げられたこともあり、山岳気象予報士としての仕事が入ってくるようになりました。
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