2015.03.27 [戸隠地質化石博物館(長野市)学芸員 田辺智隆さん]
自然とのつながりが分かると、山の見え方も変わる
戸隠地質化石博物館では、戸隠だけではなく、広く長野盆地周辺がどのようにできあがっていったのかを知ることができます。「博物館で見て、自分で考えるという癖をつけてほしい」と話す田辺さん。楽しいお話と、館内の案内は続きます。
自然との付き合い方は、食にも表れる
- 普段目にしているような何気ないところでも、歴史を感じられますか?
長野市中条(旧中条村)の「アルプス展望広場」など平らなところは昔、犀川や千曲川が流れていた平野です。だから、北アルプスが良く見えます。「わー!きれいに見える」とは思っても、どうしてきれいに見える場所なのかは考えないですよね。
千曲川は海の名残です。持ち上がっていって、最後の水の出口が川になりました。山国・信州に日本で一番長い川が流れているのは、海だったからなんですよ。
- 山、川、平野…いろいろなものがつながっていくんですね。
まっすぐ流れている川は、人が流れを変えた川です。裾花川は江戸時代に人が流れを変えた川で、本来は長野市役所の裏側に流れていて、八幡川がその名残です。周辺は新しく田んぼが作れるようになったということで「新田町」「若里町」という地名が付きました。地名には由来があります。市内には「島」という字が付く地名が結構ありますが、それも海があって、川になって、水があったから。地名は過去のヒントなんですよ。
- 水にまつわる地名は市内でもよく見かけます。
山と同様、川にも個性があります。航空写真などで見ると、犀川の周りは白くて千曲川の周りは緑色になっています。犀川は河川敷に石がゴロゴロしていて、水はけがいい。だから川中島では桃を、松代では長いもを作っているんですね。生い立ちによって、どういう作物が適しているかが決まるわけです。
- 農作物にもつながっていく、と。
自分の住んでいるところがどういう土地なのかを知った上で、何を作ればいいのかを考えながらやってきたのが、長野県の「食」です。山との付き合いは食にも出ているんです。「おいしい」というPRも大切ですが、本当はそういう背景も一緒にアピールしていってほしいですね。
長野県で暮らすことは、山と生きること
- さまざまなことが、きちんとつながっているんですね。
里山に住むというのは、水がどこからきているか、人がどうやってご飯を食べているかなど、つながりが見えることです。長野県で暮らしていくことは山と生きるということ。私も長野に来なければ気付かなかったかもしれません。たまたまこういう楽しい仕事に就くことができたので、その面白さを皆さんに伝えるために尽力したい。展示品があって、ボタンを押すと解説のテープが流れるという博物館では、伝わらないですよね。総合的にその地域の魅力を捉えて、発信していきたいと思っています。
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