2015.03.27 [戸隠地質化石博物館(長野市)学芸員 田辺智隆さん]
自然とのつながりが分かると、山の見え方も変わる
- 田辺さんの話があるのとないのとでは、展示物の見え方が全然違います。
博物館では、自然観察教室や植物観察会、地層見学バスツアーなどのイベントも開催しています。「どうしてこんなところから化石が出るの?」という不思議からスタートして、最終的にはここで人が生きている意味を考えてもらうことができれば。子どもたちにも、ここで生きる意味を感じてほしい。そうやって伝えていかないと地域で生きる人がいなくなっちゃうんじゃないかなというふうにも思うので。
- 子どもたちにとって、貴重な体験になるのではないでしょうか。
このあたりはたくさん化石が出るので、昔は砕いて飼っていた鶏にあげていたようなんです。カルシウムを取ると良い卵を産んでくれるからって。きれいな石も、珍しい岩も、出合いは一期一会。知らないと単なる石にしか見えないし、もしかすると気付くことすらないかもしれません。発見するためには学習が必要。その一つのきっかけになるのが博物館です。
- 学ぶことで、見え方は変わりますか?
変わると思います。戸隠山も、ただ見ていれば単なるゴツゴツした山ですが、見ようと思えばしま模様が見えてきます。あれが海の証拠なんだ、ということが分かる。いろいろなことが分かるようになると、また山に行きたくなるはずです。
- そうすることで、知る楽しみ、見える楽しみとどんどん面白さが広がりますね。
長野県は観光客も多くいらっしゃいます。自然が豊かで風景が素晴らしいということもありますが、単にきれいというだけではなくて、地形が動いているということを実感できるという見どころもあるんです。そういうことが分かると、山の面白さもふくらむと思いますよ。
山や川、化石や動植物のことから、戸隠神社、そば、忍者のことまで。田辺さんの話は自在に広がり、その全てのことがつながって今があることに驚かされます。「26年もここにいるからできること」と田辺さん。これから先も、訪れた人に歴史と成り立ち、個性と魅力を伝え続けてくれることでしょう。
PROFILE
1961年生まれ、千葉県市川市出身。中学2年生で訪れた美ヶ原から見た景色に感動し、その後、信州大学へ進学。1989年から現職。「落語家になりたかった」という軽快な語り口は、訪れた人を楽しませるだけではなく、自身で考えて学ぶことの面白さをも気付かせてくれる。「地域の小中学校の子どもたちとフィールドワークに出ることも多い。地元住民に一番サービスしないと(笑)」
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