信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

しあわせ信州 > 長野県魅力発信ブログ > 信州魅力人 > ナディック(須坂市)代表取締役 上野栄一さん > 「できっこない」を可能に! 自動車部品づくりに革命を起こす

「できっこない」を可能に! 自動車部品づくりに革命を起こす

―バリというのは、金属の「ささくれ」のようなものです。工業製品にとってはとても厄介な「困りもの」ですね。

そうなんです。
バリがあると、そのバリが取れて違うところに悪影響を及ぼすことがあります。金属片ですから危ない。それに、人が触ったときにケガをすることもある。
だから、バリは工業製品の中ではかなり嫌われものです。

―板状の金属なら、簡単にバリも取れますよね。でも、パイプの内側のバリを取るというのは想像しただけでも大変そうですね。

ドラム缶みたいな大きいパイプだったら、中に入って簡単に取れる。でも、数センチサイズの製品からバリを取ろうとすると全然取れなかった。顕微鏡で見て、いろんな方向からバリを取ってみたり…でも、結局はどこかのバリをとると、また別のバリが、とイタチごっこでした。
後処理も大変で、1品1品すべて検査が必要になります。そういう意味で、内側から抜けば検査も不要で、手間も省ける。メリットがあるから、開発を始めたんです。

―パイプに穴を開ける、というのはよくある加工技術ですよね。例えばクルマのどんな所に使われるのでしょうか?

画像4

例えばエアバッグの場合、設置されたパイプの穴を通してエアバッグが膨らみます。もし内側にバリが残っていた場合、エアバッグが膨らんだとき、バリがエアバッグの袋を破ってしまいます。
つまり安全を守る重要な部品なんです。

私たちの技術は、内側から穴を開けている。だから、そういった危険がないんです。

他には、自動車の油圧ブレーキ、自動車のエンジン部品が多いです。


―エアバッグもブレーキもエンジンも、みんな命に関わるもの。とても大事な技術ですね。

私たちの技術は、人命に関わる、安全を守る部品に採用されています。

―実際の技術について詳しく教えてください。バリを残さないために内側から穴を開ければいいという発想は分かります。でも、内側から穴をあけるプレスって、簡単ではないですよね。

普通は「そんなのできっこない」と。理論的にも無理と思われていましたが、まずはやってみようと。
試行錯誤の末、なんとか出来上がったわけですが、複雑な仕掛けでやるのではトラブルなどがあり信頼性が低い。だから、いかにシンプルで確実に穴を開けるかということを目指しました。
実は、複雑な仕掛けを使えばなんとかできてしまいます。いかにシンプルにするか。ここが1番難しいんですよね。

―どうやって内側から穴をあけるんですか?ホチキスで輪っかのようなものを留めるのも大変なのに、パイプの内側からプレスなんていったら、本当に大変。なかなか技術については言えない部分もあると思いますが、どこを工夫されたんですか?

例えて言うと、ドラム缶の中に人間が入って「金づち」で穴を開ける、というイメージです。それをものすごく縮小した感じです。
それを想像していただくと分かる技術なんですが…


―ドラム缶の中から「金づち」で…わかったようでわからないのですが、少しだけ企業秘密の解説をお願いします。

小さな径のパイプには設計上どうしてもパンチが入りません。パンチをパイプに入れることができなければ、内側から穴をあけるアイデアを実現することができません。
そこで、「パンチを横にする」ことで、パイプの中に入れ込んだのです。つまり、これが「金づち」です。
通常は上下運動によって金属を打ち抜くパンチですが、「『縦』がだめなら『横』にするしかない」と、横向きにした特殊な構造のパンチを考案し、パイプの中から穴をあけることに成功しました。横向きに入れたパンチに細工を加え、横穴をあける独自の「金型」を開発しました。


画像5

ここまでできても、そのあと問題が沢山出てくるわけなんです。
そこで、解析技術や、素材の工夫、形状の工夫をして、不可能だった技術を可能にしていきました。
本当だったら詳しく教えたいところですが…あとは企業秘密。このへんで控えさせていただきたいと思います(笑)。

1 2 3

このブログのトップへ

このブログや記事に関するお問い合わせ窓口

営業局
TEL:026-235-7249
FAX:026-235-7496