2012.02.24 [ナディック(須坂市)代表取締役 上野栄一さん]
国際特許取得!市場は世界へ 小径パイプ「バリなしプレス加工」
須坂市のナディックは、自動車部品づくりに革命をもたらしました。
新たな発想で生まれた穴開けプレス加工の技術は、「作っては検査、バリを取り除いては検査」が必要だった工程を一気に短縮。大幅なコスト削減を実現したのです。
「バリを嫌うのは自動車部品だけじゃない。バルブ製造などほかの分野でも、バリで困るという話は多い。だからまだまだ市場はこれからです。」
ナディックが開発した「パイプ内側からの横穴あけ機構(金型)」のノウハウが大きな収入源につながっています。
長野県の匠の技術をもつ企業の経営者にスポットライトを当てる「信州魅力人」。ナディック社長の上野栄一さんの2回目は、自社の「バリ無し穴あけプレス」の世界戦略についてうかがいました。
―小径パイプの内側に「バリ無し加工」ができる、という御社の特殊な技術。真似されたり、アイデアを盗まれてしまっては困るということで、ちゃんと特許をとられた。でも、特許をとるというのは、大変なことですよね?
そうですね。
昨年末から今年、技術開発を始めて7年になりましたが、ようやく特許が取れました。
申請からここまでくるまでには大変な努力がありました。
特許をとるのにも、実際に同じようなアイデアで取り組まれている会社もすでにあるわけです。特許というのは「どこもやっていない技術」を認めるものであるわけですから、「これはどこかの会社のものと似ているんじゃないか」というものが色々とありました。
しかし、そこを一直線に主張して認められたというのは本当にありがたいことです。
小さい会社ですので、申請する力というのは非常に弱い。そういう意味では、申請する弁理士さんとやり取りをする中で、弁理士さんにもその技術を分かってもらわなければならない。ましてや国際特許をとるまでには、やはり有能な弁理士さんに出会えたというのもナディックにとっては非常に良かったと思います。
―特許を取るのには、数千万円という大金がかかる。やはり、国や県、市からの支援は大きかったのではないでしょうか?
経済産業省の補助金は、「特許のための資金」として援助してもらいました。
やはり一度はじめた以上、「特許をとる」という目標を掲げてやってきました。国や県、市からの後押しもあって、私たちのような小さい会社でも特許を取れたと思います。
―そもそも、なぜ特許をとったのですか?
そうですね、本当でしたら、ナディックの企業秘密にして、その技術でつくったものを売ればよかった。でも、ナディックは「ファブレス企業」なんです。
ファブレス企業というのは、製造設備を持たない会社です。
ご覧のとおり、会社の中にはパソコンしかありません。つまり、この会社では部品の製造はしていないのです。
だから、この技術で売っていこうとなったときには、社内だけの秘密にしてつくったものを売っていくという方法は難しい。
将来について考えたときに、「技術特許」が必要だ、と考えました。
小さい会社ですが、特許をとっていれば、特許の重要性を武器に大企業とも闘える。大企業に採用していただくにしても、特許が一番の勲章ですし、信用もされます。
ナディックは小さい会社です。認めてもらえる部分が必要だからこそ、特許をとろうと考えました。
―特許は、小さな会社が生き残るための武器になるんですね。
プレスメーカーさんなら、プレスする機械を持っている。
金型メーカーさんですと、作った金型を納められる。金型を売れば一つ何百万円することもあります。
でも、御社の場合はその両方が無い。
事務所にパソコンが並んでいて、パソコンに向かって仕事をされている。ある意味、ホームページを作るIT企業のようですね。
「ファブレスメーカー」つまり、生産設備を持たない会社ということでやっている醍醐味はどこにありますか?
一番は、技術開発に集中できる点です。
実際、協力工場にお願いして作っているものはあるんです。ただ、私たちは技術を売るという部分を重視しております。
生産設備を持って加工や生産するとなると、今度はそちらの方が気になってしまいます。今日の生産は少ないとか、機械が動いていないとか。
そういう心配があると、技術に集中できなくなってしまいます。
だから、生産設備をもたないファブレス企業というやり方は、技術開発に集中するにはいい方法だと思います。
―「技術を売る」ファブレス企業ということは、アイデアはどこにでも売れる。市場はボーダレス、世界中どこでもいいんですよね。
そうです、どこでもいいんです。
これが長野県の技術です、信州産ですと。
いかにその技術を「使いたいお客さんに使っていただけるか」ということを念頭に、営業活動しています。
自分たちはものを製造していないので、お客さんが自分の技術として取り入れたいと言ってくださいます。ライバルにならないのです。
お客さんの仕事をナディックが取ってしまうというようなことがないので、非常に良いと思っています。
―ちなみに、御社の技術はどんな企業に使われていますか?
自動車関連の部品メーカーさんが主です。
今は自動車関係が100%なんですが、これからはエアコンの関係ですね。自動車に限らず、空調やその他、油圧の関係、医療やその他のものも出てくると思います。そういうところに進出したいなと思います。
―御社のアイデア、技術が世界のものづくりの現場で生かされるというのは、醍醐味ですね。
そこが1番です。
やはり、弊社の技術を使って世の中にものが生産されているというのが1番嬉しい。世界中で使われる技術になるように、頑張っていきたいと思います。
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