信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

皆が忘れていくようなことを残すことが仕事

これを作るというのは大変なことで、やはり昔の技法をそのままに今でも作っているようです。そこでまず、国立博物館に見せてほしいとお願いしたんですが、文字では見たことがあるけど本物は見たことない、と言われて。(残っていると手に入れようとする人たちがいるためか)地に穴を掘って埋めてしまうらしくて、本物は残らないんですよ。

-結局、実物は見ないまま?

そうですね。でも、当時の染色の技法は記録が残っていて、分量も書いてありました。ただ、そのままでは何のことかわからないことも多くて…そこをまず調べてから、試織しました。作業は大変でしたが、「そういうものを織れ、後継者になれ」ということで、協会が私を推薦してくれたんだと思います。皆が忘れていってしまうようなことを残していくことが、我々のような伝統工芸士の仕事なんでしょうね。

-長野冬季五輪の公式写真集「豪華版」の表装も担当されていますよね。

長野冬季五輪の公式写真集小栗さんが表装を担当した
「長野冬季五輪の公式写真集」

県の工業組合の理事長をしていたときに、「オリンピックの豪華本を出すので協力してほしい」という話をいただきました。信州紬らしい色合いで、でも五輪なので、世界の素材を使った色を使いたいと思いました。

青はメキシコのロックウッドという木と化学染料を混ぜ合わせて紺色を出しています。黄色は長野県の色、リンゴの樹皮で草木染めをしました。赤はインド地方の、セイヨウアカネを媒染したもので色を出しました。緑は、紺と黄色を足しているので、先ほどのロックウッドの紺色と、ヤマモモ(シブキ)との混合で緑色を出しています。そして黒は、化学染料を主体にしています。背表紙には紫を使っていますが、これはアフリカ大陸のサボテンのラック、ラックダイの赤とロックウッドの紺色を混ぜて紫色を出しています。「五輪の色を長野県にふさわしい感覚でやってほしい」と言われていたのですが、長野県、信州紬、そして世界とうまくつなげて表現ができたと思っています。


そのほかにも、2001(平成13)年には京都府府議会議長の依頼を受けて天蚕(やままゆ)のスカーフを皇后陛下に献上しています。昔の文献などを参考にしながら復元を試みるなど伝統を大切にする一方、消費者意識の変化を意識しながら、新製品開発も行う小栗さん。次回は昔、現在、そして将来へと続いていく絹に対する思いを伺います。


那美屋織物
住所 長野県飯田市小伝馬町2-3497-4
電話 0265-24-7380
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