自然と遊ぼう!ネイチャーツアー

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悪沢岳(赤石山脈の盟主)

 2014年の幕開けは、赤石山脈(南アルプス)の悪沢岳(わるさわだけ:標高3141m)の紹介からです。

 悪沢岳は赤石山脈の核心部にあります。別名「東岳」とも呼ばれ、近くの2つの頂(荒川前岳・荒川中岳)とともに、荒川三山を構成しています。この山について「日本百名山」を書いた深田久弥氏は、この立派な山を「東岳」などとは呼ばず、「悪沢岳」というちゃんとした名で呼んでほしいといっています。厳密にいうと、荒川三山の頂のうちで長野県に入っているのは荒川前岳のみで、悪沢岳の山頂は静岡県に入ります。ここでは南信州の大自然を特徴づける赤石山脈のとっておきの山という意味で、敬意を込めてご紹介します。

 ところで赤石山脈の名のもとになっているのは、文字どおり赤い石です。これは、赤色チャートという石で、今から1億年もしくはそれ以上前に、深い海の底に放散虫という単細胞生物の死骸が静かに堆積し、その骨格が集まって出来たものです。悪沢岳の山頂部にはこの赤色チャートの岩塊がまとまって分布します。赤石そのものは、巨大な山脈のところどころに露出しますが、同じく赤石山脈の名山として知られる赤石岳(標高3120m)の山頂には分布していません(山麓の沢にはあります)。つまり、赤石山脈の赤石岳の山頂に赤石はなくて、すぐ近くの荒川三山の悪沢岳の山頂に立派な赤石があるということなのです。ややこしくてすみません。
 チャートは周辺の砂岩や泥岩とくらべて非常に堅いため、悪沢岳の山頂部には愛想のよくないゴツゴツした特異な景観が広がっています。深海底で生まれたチャートが、3000m級の高山にあることだけでも驚きですが、それだけではありません。この山稜周辺には数万年前の氷河期に形成された美しいカール地形が集中しています。さらに、その地形や岩屑を基盤に、見事なお花畑も出来ています。




 山の高さと大きさ、姿かたち、山頂をつくる岩石、氷河地形や高山植物など、さまざまな魅力をいっぱいもつ悪沢岳は、名前がちょっと変わっていますが、赤石山脈の盟主といえるような山です。簡単に行ける山ではありませんが、機会と体力があったら足を運んでみてください。

 今年は南アルプス国立公園の自然公園指定から50周年にあたります。この山なみの世界遺産登録を目指す取り組みや、ジオパークとしての利活用への関心も高まっています。その一方で、リニア中央新幹線の長大トンネル建設も計画されています。いろんな意味で、今年は赤石山脈から目が離せない年になりそうです。

 悪沢岳を思ふ
 ~ 悪名もどこ吹く風よ 初茜 ~

 

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