自然と遊ぼう!ネイチャーツアー

~自然に触れる、学ぶ、そして守る~ 自然環境や生物多様性、自然体験型ツアーについての情報をお届けします。

冬の到来(白馬岳)

北アルプスも、ついに冬の到来です!

下の写真は、10月半ば、台風通過後の白馬岳山頂(標高2932m)付近から、杓子岳~白馬鑓ヶ岳方面を見たものです。

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北・南・中央の3つのアルプスからなる日本アルプスの中で、一番複雑な形成史をもっているのが北アルプスです。その中でもとくに多彩な地質と地質構造がみられるのが後立山連峰の一角にある白馬岳周辺地域です。

ここには、かつての海溝軸に沿って付加体として集積された堆積岩や火山岩類、あるいは変成岩や地下深部マントルを構成していた蛇紋岩、さらにそれらを脈状に貫く流紋岩質の火山岩など、多種多様な岩石が複雑に混じり合っています。中央アルプスや南アルプスと違って、わずかな距離の登山ルートを歩いても、行く先々で様々な石に出会います。信州大学の原山氏によれば、このあたりは「岩の闇鍋(やみなべ)」状態であるとか・・・。

面白いのは地質だけではありません。白馬大雪渓から小雪渓を登り、村営頂上宿舎に着く手前の「葱平(ねぶかっぴら)」には、よく目立つずんぐりした大岩があります。これは、かつてこのあたりを覆った山岳氷河が削りだした羊背岩(ルントヘッカー)といわれています。目をこらせば、岩の表面には氷河が削ったと見られる擦り傷がいくつもあります。向かい側の杓子岳の山腹には北に向いたやや小振りのカール地形が見られ、また白馬岳の稜線まで登れば、白馬三山(白馬鑓ケ岳、杓子岳、白馬岳)から小蓮華山にかけて、なだらかな西側斜面と切り立った東側斜面のコントラストが見事な「非対称山稜」を望むことができます。山々は、隆起と崩れと破砕作用、そして風雨や雪氷に磨かれながら、それぞれの個性的な姿かたちを競い合っているようにも見えます。

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上の写真:白馬岳直下、葱平の羊背岩(高さ14m、長軸は70m以上もあります)

秋から冬へ向かう季節は、周辺のお花畑はすっかり枯れ色となり、山はとても静かになります。その分、この時期は落ち着いて岩や地形を味わうのに良い季節といえるかもしれません(日が短いのはちょっと残念)。

そして11月ともなれば本格的な雪がやって来て、山は深い眠りに入ります。

 ~青空に満ち足りて山 ねむりけり ~ (句集「風に鹿」所収)

                    (投稿者 長野県環境保全研究所自然環境部 富樫)

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