2025.09.30 [ 農地整備課 ]
雑草と侮ることなかれ―草原生態系を守るために、ため池工事で行っていること
こんにちは。上田地域振興局農地整備課 みーです。
みなさん、「絶滅危惧種」や「レッドリスト」という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、どんな動物、植物を思い浮かべますか?
私は、「パンダ」と「イリオモテヤマネコ」、「屋久杉」でしたが…。余談です、すみません。
さて、私たちの農地整備課では、安心安全な暮らしを維持するためにため池を改修する仕事をしていますが、ため池の堤体(ていたい)(つつみ、土手)の工事をする際に、そこに生えている『草』をいったん避難させ、堤体が新しくなったら、その堤体に戻す(植える)ことをしています。
「なぜ?」って思われましたか?
なぜなら、そこに生えている草は、ただの雑草ではないからです。
例えば、上田市塩田平にたくさんあるため池の多くは、400~300年前に作られたものですが、その後ずーっとそこにある施設、しかもみんなで大事にしてきた施設なので、自然が守られてきました。
つまり、ため池の堤体には古くからの草原生態系が維持されています。
ため池の堤体は、大変希少な草花がある、貴重な場所、というわけです。
だから、現代においてため池の工事を行っている私たちは、その希少植物を次代に引き継ぐため、工事の前に一旦鉢やポットに移し、工事の終盤に、堤体に戻すということをしているのです。
まるまる表土をはぎ取り、また戻すということもしています。
山田新池(上田市山田)の工事では、令和4年の秋に植物を掘り上げ、令和6年の初夏に戻しています。
↑ 山田新池 紅葉が始まっています
↓ 堤体に生えている希少植物を掘り上げ、鉢(ポット)に入れました。こんな斜面での作業です。お疲れ様です。
↑ 一旦、近くの畑をお借りして、保存します。
1年半後・・・。初夏のいいお天気の日です。
↓ 元あった場所に戻します。
↑ 協力してくださる皆様です。
こうして、山田新池はきれいに、丈夫になっただけでなく、以前と同じ植物が生えているため池になりました。
植物がそこに根を張ることによって、堤体がさらに丈夫になります!!!
大変な作業ですが、地元住民の方々、近くの学校に通っていらっしゃる学生さん、筑波大学菅平高原実験所の関係者の皆さんなどのお力をお借りし、できうる限りのことをしています。
こうして、かけがえのない自然を守りながら、ため池を守る工事を進めています。
最後に、昨年までため池の工事を担当していた職員が、「ため池工事における植生への配慮について」と題した考察を、全国農村振興技術連盟発行「農村振興 2025 9月号」に投稿しております。ご覧ください。(全国農村振興技術連盟様にご承諾頂いています。)
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