信州魅力発掘人

信州に魅せられ、活動する人たちの言葉には「信州の魅力」が凝縮されています。信州の魅力を掘り下げ、それを語る「信州魅力発掘人」。山の強さ、美しさ、厳しさ、素晴らしさを知る人たちが「山の魅力」を伝えます。

林業×女性経営者 vol.2

26歳で長野県に移住した原さん。夫・伸介さんの炭焼きの仕事を手伝ううちに、山の中で柳沢林業の当時の社長(現・会長)柳沢英治さんと知り合い、同社に入社します。

林業のことを、もっと知ってほしい

- 柳沢林業には、社員として入社されたんですね。

最初は、山で架線張りしているから一度見においでと誘われたんです。その様子を見て、井川にいたときのことを思い出しました。架線仕事は大変なんですが、それでもまたやりたいという気持ちになってきて。2003年12月に、入社しました。

- そのころは社長になるなんて…

もちろん、思ってもいなかったですよ(笑)。

- じゃあ、社長になったきっかけは?

きっかけというと…何でしょうね。私はずっと現場で働いていて、ケガがないのが自慢だったんです。でも、1年半くらいの間に立て続けにケガが続いたことがあって。そのときに、この仕事は嫌いじゃないけれど、何を目指すでもなく、山に入ってチェーンソーを振り回しているだけでは、自己満足で終わってしまうんじゃないかな…と考え始めたんです。

- ケガをしたことが、働き方を見つめ直すことになったんですね。

そのころは、山の話を聞かせてほしいという依頼が増えてきていたころでもありました。以前は、女性だからと注目されるのは嫌だったんですが、逆にいい機会と捉えて、林業のことを知ってもらえればいいかなって。それで、自分自身の勉強や、他の人に伝えることにも時間を使うようにしました。そうすると、山の話を通じて人脈も広がっていきました。

- そのあたりを、買われたのかもしれないですね。

現場の仕事だけではなく、知識だったり人脈だったりも見てくれたのかもしれません。でも、社長になる前、1年間ほど、林業の世界を離れたんです。

- え?仕事を辞めたんです?

1年間、ヨガのインストラクターをやっていました。説明が難しいんですが…林業だけの世界じゃなくて、他にも手法として持っていたいかなと思って。短い間でしたが、やってなかったら、社長は引き受けられなかったと思います。最初は何となくやればいいかって思っていましたが、いざとなったら、大変じゃないですか。

- 確かに、社長となると会社をまとめなければいけないですしね。

会長が今までやってきたように、現場も営業も全てやって皆を引っ張っていくということは、私にはできないし、そういうふうになろうとも思いませんでした。でも、現場は好きですし、今までやってきたことを「働きやすい職場づくり」に活かすことができればいいかなと。会社の行動指針の最後にはこう書いてあるんです。「社長は『代表世話役』として、社員の健康を守り、社員どうしの楽しい時間の共有をはかり、社員の家族や暮らしの時間も大事にする、粋でオツな働き方を創出します」

- 粋でオツ、というのが面白いです。

私が女性ということもあって、「女性の社会進出の後押し」など言われることも多いんですが、女性を強調しすぎるのは、ちょっと違うんじゃないかなと思っています。男性と女性で競争するんじゃなくて、共生する。それぞれの役割を果たしながら、いいところを引き出し合えればいいじゃないですか。

- 林業は「男社会」のイメージがありますが、実際のところどうなんでしょう?

山仕事となると、男の人がいないとできないんですよ。でも、現場に一人は女性がいるといいなと思っているんですけどね。男の人だけだと、危険を顧みないというか…。女性がいるだけで、作業が少し丁寧になるとか、無茶をしないとかいう良い面が出てくるんです。

- ちょっと抑止力が働くのかもしれないですね。

今までは男性だけで、狭い枠の中で林業を捉えてきてしまったからか、こんなに一生懸命頑張っているのに伝わらなくて悔しいと思うこともありました。どういう仕組みで、皆の暮らしにどうつながっていくのか、知ってもらいたいんです。

- 暮らしとつなげていくと、女性が活躍できる場面も増えそうです。

自分たちができることは限られているかもしれませんが、資金面だけではなくて、労力だったりアイデアだったり…そういう間口を広げていければと思っています。


林業の就業人口は最盛期の3分の1、約5万人というのが現状。しかし近年、林業の世界に飛び込む若い人たちも増えてきているといいます。林業を通じた山と人との関わり方について、さまざまな取り組みを行っている原さん。次回、詳しく伺います。

PROFILE
神奈川県川崎市生まれ。筑波大学卒。木挽き職人の手記をきっかけに林業への道へ。静岡・井川で地元森林組合に3年勤めた後、長野県へ移住。20代で狩猟免許を取得したほか、長野県グリーンマイスター、ヨガインストラクターの資格も。2016年3月、全国の農山漁村地域の次世代リーダーとして期待される女性や団体に贈られる「農山漁村男女共同参画優良活動表彰」の最高賞・農林水産大臣賞を受賞。

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