2011.01.07 [信州うるし工房 彩(飯山市)藤澤一雄さん]
伝統工芸を身に纏う − Bi-sai
-そこで、仏壇以外のものも考えていかなければならないと。
蒔絵の技法は奥が深い。仏壇のような「眺める蒔絵」と、お椀とか漆器のような「手で触る蒔絵」では違います。何か新しくやろうとしたときに仏壇の蒔絵だけではだめだと思って、芸大の漆芸作家のところに通い始めて。そこで新しく蒔絵の技術を5年くらい学びました。
その後、学んだことをどう活かそうかと考えて、まずは成功者のモノマネをするのが一番いいかな、と。現地調査というか、とりあえず百貨店に行っていろいろ見てみたんです。すると、京都の仏壇関係の人だったかな、私と同じような立場の人がアクセサリーを作って売っていました。単刀直入に「儲かりますか?」って聞いたら「そこそこです」なんて言われたので(笑)。それで女性向けにアクセサリーを作り始めました。最初は仏壇の補填をするくらいの気持ちで始めたんですが、全国各地を回ったり、逆に百貨店からイベントに合わせて作って欲しいという依頼がきたりするようになって、アクセサリーのほうがどんどんメインになっていきました。
-時計はアクセサリーの延長線上だったんでしょうか?
延長線上というわけではないですね。あるとき壁掛けの時計を作ってほしいと言われたんですよ。それをきっかけに何となく、インターネットで蒔絵の腕時計を調べてみたら、値段が1千万くらいのものが並んでいました。これではちょっと、普通は手が届かないかな…と思ったので、もう少し一般的に使えるようなものを作れないかと思うようになりました。
あるとき、以前、展示会で一緒になった諏訪の手作り時計の職人さんを思い出して…。その人にお願いして文字盤をもらって、試行錯誤しながら作ってみました。そうしたら、割とうまくいったんで、これならいけるかもと思って。
もともと、人と同じことをあまりやりたくない性格なんでしょうね。アクセサリーが徐々に市場に出回ってきたので、次の一手をどうしようかなと漠然と思っていたときだったので。何か違うことを、人がまだ見つけていない市場でやってみたいという気持ちがあったんだと思います。
-今後の展開は?
日本だけではなく、今後は海外、中国やヨーロッパでも販売していければと考えて動き始めているところです。でも、蒔絵は説明が難しいというか…パッと見ただけではどうやって作っているのかわからないんですよ。あまりにも緻密で、かえって印刷のように思われることもあります。だから、なるべく実演を交えるようにしています。遠いので大変なんですけどね(笑)。デザインも、日本と海外では好みが違います。繊細だからいいというわけではなく、富士山とか、日本らしさを感じられるものがいいみたいですね。
もともとオーダーメードでやろうと思っていたので、今後、もう少し幅を広げていこうかとも思っています。ボールペンや万年筆などアイテムを増やしていく予定です。
アクセサリーや時計以外にも相撲の行司が使う軍配や印籠など、藤澤さんの技術は既に多くのアイテムで使われています。
「昔は仏壇の蒔絵だけ考えていればよかったのにいろいろなことをしなくちゃいけなくなってきちゃって大変」と話す藤澤さん。次回は藤澤さんがこの道に入ったきっかけなどについてお伺いします。
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