信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

すべての食材の中でフナが一番

「ふなずし」とは、塩漬けしたフナをご飯とともに漬け込んで発酵させる熟ずしの一種。諏訪湖で獲れるフナを使ったものは、江戸時代に幕府の献上品として珍重されていました。

今回紹介するのはそんな「ふなずし」を「鮨鮒(すしぶな)」として140年ぶりに復活させた諏訪湖漁業協同組合の組合長・藤森貫治さん。「鮨鮒」のこと、諏訪湖のこと、そしてご自身のことを伺いました。

フナほどおいしいものはない

-「鮨鮒」はどのようにして作っているんですか?

諏訪湖漁協の鮨鮒
諏訪湖漁協の鮨鮒

組合の役員9人と、ほかに「鮨鮒」の部会があって、実働部隊として部会のメンバー10人くらいで作っています。

まず5月にフナを獲って、生きているうちにさばいて塩漬けにします。獲る量は1日に200~300匹。そのまま4~5ヶ月塩漬けして、10月ごろに塩抜きして乾燥させます。乾燥したらご飯と一緒に漬けるんですが、ご飯が冷めないうちに漬けるのがポイント。冷めてしまうと雑菌が入っちゃいますから。わらで縄を編んで敷いてね。ご飯の中にわらにいる乳酸菌が入っていって、フナが漬かって「ふなずし」になるんです。

ご飯と合う乳酸菌はどれだろうと、いろいろ試しました。ヨーグルトやわらなど6種類くらいで試したら、どれも全部発酵が見られました。何を使っても大丈夫なら、せっかくだから地元のものを使いたい、ご飯はお米だからお米を育てたわらの中にいる乳酸菌が一番いいんじゃないか、ということでお米を作った田んぼのわらをもらってきて使っています。フナもお米も「諏訪産」です。

-評判はどうですか?

昨年から販売を開始しましたが、もうリピーターの人がいます。今年漬け込んだのは700匹(販売数は400匹)ほど。まだ売り始めたところだし、なかなかたくさんはできないので残念ながらお断りしてしまった人もいます。ゆくゆくはもっと増やしていきたいですけどね。

でも現実的には、2,000~3,000匹くらいをきちっとコンスタントに作って、ブランド品としてやっていければいいんじゃないかと思っています。ブランド品にするというのは商品の価値を高めるということ。材料、製造工程、そして品質についても保証しないとブランド品として確立できないから、最初からそれをきちっと守っていこうとしています。

例えば、品質保証。菌の数、詳しく言うと一般細菌、大腸菌、そして一番大事な乳酸菌がそれぞれどのくらいいるのかというのを公的機関で調べて、検査結果が出てから販売することにしました。結果は、一般細菌が47万、乳酸菌の数が47万。実は乳酸菌は一般細菌に入るから、ほかの細菌は0っていう検査結果が出たんです。大腸菌は1グラムの中に270以下ならいいということになっているんですが、大腸菌は10以下でした。雑菌がそれだけいないということは、純粋な乳酸菌を発酵させてできたってことだから、余計なものがなくて味がいいってことなんですよ。もちろん味には自信を持ってはいましたが、科学的にも立証されて、本当に自信を持って薦められる商品だと思っています。

-江戸時代は献上品だったそうですね。

諏訪湖漁協の鮨鮒
諏訪湖漁協の鮨鮒

「ふなずし」そのものは数百年前から作られていたそうです。鎌倉時代くらいからかな。これは諏訪大社に供物として、神前に捧げるためだったようです。500~600年前の神社の記録を見ると、神前にあげられたという記録もあるし、神事の後に神官たちが食べたという記録もあるそうです。それが、時代が下って江戸時代、幕府に諏訪藩(高島藩)が献上し始めました。琵琶湖のほうも献上していたらしいけど、それとは味が違ったんじゃないですかね。毎年、幕府から「いつできるんだ」と催促がきていたほど珍重されていたそうです。

でも幕府がなくなり、献上品は必要なくなったので作るのをやめたようです。2年くらいかけないといけないから、作るのは結構大変なんですよ。もともと庶民が食べていたものではないので。正確に言えば、食べてはいたかもしれないけど、わざわざ2年もかけて自分たちの食べ物を作らないですよね。時間かけて作らなくても、生のものをそのまま味わうのが一番おいしいですから。「ふなずし」にしなくてもフナはおいしく食べられるんですよ。それでだんだん廃れてきて、「ふなずし」が作られなくなったんでしょうね。

-どうして復活させようと?

もともと、復活させようという思いがあったわけではないんです。とにかくフナをなんとかしたいと思っていて。諏訪湖はフナがたくさん獲れるけど売れないんですよ。今、魚っていうのは、川だけじゃなくて海の魚も含めて、消費者から敬遠されていますからね。特に川魚は骨があるし、臭みもあるし。今の若い人たちは手間のかかる料理はなかなかやらないから、だったら手間のかからないようなかたちで提供しなければならないという話になりました。捨てるしかないような、そんなタダ同然の魚を有効に活用したい、何とか商品として売る方法はないか、ということを考える中で「ふなずし」という方法が浮かんできました。

私は、魚の中でフナほどおいしいものはないと思っています。すべての食材の中でフナが一番。料理の仕方も豊富で、煮ても焼いてもいいし、刺身もいいし、乾燥して粉末にしてもいい。粉末にしてから味噌とあえて「鮒味噌」にしてもおいしいです。これほど食べ方のある魚はないんですよ。

フナは獲れるけど、売れない

でも、現状では収入にならないからフナは獲らない。小さいのはまだ佃煮にしたりできるけど、大きいのは売れないから捨てるしかないんです。フナ自体も、大昔から見れば減ってきていると思いますよ。今の魚の住環境から考えると。

-魚の住環境、諏訪湖の現状はどうなんですか?

一番問題なのは夏の諏訪湖です。夏の諏訪湖は表面から水温が30度、25度、20度くらいの3層になっています。これは川から流れ込んでくる水が、熱くなった地表を通ってくるから30度くらいになっていて、それを上段放流するものだから、水温の高い水が上にいってしまう。この水は酸素もたくさん含んでいるんだけど、上のほうの水だけが循環している状態できちんと対流が起こらないから、DO(溶存酸素)が上は10~13mg/l、でも一番下にいくと0.01mg/lしかないんです。生物が生きていく上でDOは3mg/l以上必要なので、そうなるともう湖底には生物が住めない。湖底にはヘドロがたまっていて、枯れたヒシや藻が沈んでいる。そういうものが酸化すれば、分解されて餌になったりするんだけど、酸素がないから酸化できない。それでも何とか酸化しようと、少ない酸素を吸収するからますます酸素が少なくなる。今、湖底には貝とか虫がまったくいない状態です。昨年、県が調査して、湖底が貧酸素状態という結果がはっきり出ました。1年ではデータの信憑性がないので、もう1年継続して調査をしています。実は今年の10月から、環境省も調査を始めています。どうやら諏訪湖だけではなくて、全国的にそういった傾向があるみたいで。諏訪湖(浅い湖、7m)と、琵琶湖(深い湖、90m)と、宍道湖(汽水湖)とを調査しています。水質基準や透明度など、どういう値を基準にすればいいかということを考えて動き始めています。



小さいころから、父を手伝って諏訪湖で魚を獲っていたという藤森さん。諏訪湖はずっと身近な存在で、その移り変わりを目の当たりにしてきたと言います。

現状を案じ、「諏訪湖の水はどうなんですか?」と訪ねると、藤森さんからは意外な答えが返ってきました。次回は諏訪湖の現状についてもう少し詳しい話と、藤森さんが2008年5月に組合長に就任してからのことを伺います。



諏訪湖漁業協同組合
住所 長野県諏訪市渋崎1792-374
電話 0266-52-4055
URL http://www.suwakogyokyou.sakura.ne.jp/

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