信州魅力人

信州の魅力、それは長野県内で頑張るつくり手たちの魅力。そんな魅力人の想いをお伝えします

すべての食材の中でフナが一番

諏訪湖漁協の鮨鮒

「ふなずし」そのものは数百年前から作られていたそうです。鎌倉時代くらいからかな。これは諏訪大社に供物として、神前に捧げるためだったようです。500~600年前の神社の記録を見ると、神前にあげられたという記録もあるし、神事の後に神官たちが食べたという記録もあるそうです。それが、時代が下って江戸時代、幕府に諏訪藩(高島藩)が献上し始めました。琵琶湖のほうも献上していたらしいけど、それとは味が違ったんじゃないですかね。毎年、幕府から「いつできるんだ」と催促がきていたほど珍重されていたそうです。

でも幕府がなくなり、献上品は必要なくなったので作るのをやめたようです。2年くらいかけないといけないから、作るのは結構大変なんですよ。もともと庶民が食べていたものではないので。正確に言えば、食べてはいたかもしれないけど、わざわざ2年もかけて自分たちの食べ物を作らないですよね。時間かけて作らなくても、生のものをそのまま味わうのが一番おいしいですから。「ふなずし」にしなくてもフナはおいしく食べられるんですよ。それでだんだん廃れてきて、「ふなずし」が作られなくなったんでしょうね。

-どうして復活させようと?

もともと、復活させようという思いがあったわけではないんです。とにかくフナをなんとかしたいと思っていて。諏訪湖はフナがたくさん獲れるけど売れないんですよ。今、魚っていうのは、川だけじゃなくて海の魚も含めて、消費者から敬遠されていますからね。特に川魚は骨があるし、臭みもあるし。今の若い人たちは手間のかかる料理はなかなかやらないから、だったら手間のかからないようなかたちで提供しなければならないという話になりました。捨てるしかないような、そんなタダ同然の魚を有効に活用したい、何とか商品として売る方法はないか、ということを考える中で「ふなずし」という方法が浮かんできました。

私は、魚の中でフナほどおいしいものはないと思っています。すべての食材の中でフナが一番。料理の仕方も豊富で、煮ても焼いてもいいし、刺身もいいし、乾燥して粉末にしてもいい。粉末にしてから味噌とあえて「鮒味噌」にしてもおいしいです。これほど食べ方のある魚はないんですよ。

フナは獲れるけど、売れない

でも、現状では収入にならないからフナは獲らない。小さいのはまだ佃煮にしたりできるけど、大きいのは売れないから捨てるしかないんです。フナ自体も、大昔から見れば減ってきていると思いますよ。今の魚の住環境から考えると。

-魚の住環境、諏訪湖の現状はどうなんですか?

一番問題なのは夏の諏訪湖です。夏の諏訪湖は表面から水温が30度、25度、20度くらいの3層になっています。これは川から流れ込んでくる水が、熱くなった地表を通ってくるから30度くらいになっていて、それを上段放流するものだから、水温の高い水が上にいってしまう。この水は酸素もたくさん含んでいるんだけど、上のほうの水だけが循環している状態できちんと対流が起こらないから、DO(溶存酸素)が上は10~13mg/l、でも一番下にいくと0.01mg/lしかないんです。生物が生きていく上でDOは3mg/l以上必要なので、そうなるともう湖底には生物が住めない。湖底にはヘドロがたまっていて、枯れたヒシや藻が沈んでいる。そういうものが酸化すれば、分解されて餌になったりするんだけど、酸素がないから酸化できない。それでも何とか酸化しようと、少ない酸素を吸収するからますます酸素が少なくなる。今、湖底には貝とか虫がまったくいない状態です。昨年、県が調査して、湖底が貧酸素状態という結果がはっきり出ました。1年ではデータの信憑性がないので、もう1年継続して調査をしています。実は今年の10月から、環境省も調査を始めています。どうやら諏訪湖だけではなくて、全国的にそういった傾向があるみたいで。諏訪湖(浅い湖、7m)と、琵琶湖(深い湖、90m)と、宍道湖(汽水湖)とを調査しています。水質基準や透明度など、どういう値を基準にすればいいかということを考えて動き始めています。


小さいころから、父を手伝って諏訪湖で魚を獲っていたという藤森さん。諏訪湖はずっと身近な存在で、その移り変わりを目の当たりにしてきたと言います。

現状を案じ、「諏訪湖の水はどうなんですか?」と訪ねると、藤森さんからは意外な答えが返ってきました。次回は諏訪湖の現状についてもう少し詳しい話と、藤森さんが2008年5月に組合長に就任してからのことを伺います。


諏訪湖漁業協同組合
住所 長野県諏訪市渋崎1792-374
電話 0266-52-4055
URL http://www.suwakogyokyou.sakura.ne.jp/
1 2 3

このブログのトップへ

このブログや記事に関するお問い合わせ窓口

営業局
TEL:026-235-7249
FAX:026-235-7496