2018.03.12 [ その他 ]
横溝正史と諏訪
角川は本を売るために自ら映画をつくりました。その第一弾が横溝の『犬神家の一族』(1976年)です。のちに角川商法とやっかまれますが、市川崑監督の映画は傑作でした。採用されたタイポグラフィは『エヴァンゲリオン』にも影響を与えています。『ルパン三世』の大野雄二が作曲したテーマ曲「愛のバラード」も名曲の誉れが高い。白いマスクのスケキヨは強烈なキャラとして今も人気があります。
メディアミックスで仕掛けられた横溝の本はよく売れ、文庫にも次々と作品が入り、横溝ブームが到来しました。もちろん、仕掛けたとはいえ、作品じたいがしっかりしていなければ売れるものではありません。
ミステリーのオールタイムベストを決める週刊文春の『東西ミステリー ベスト100』は1985年と2012年と2回ありましたが、国内編1位は2回とも同じ、横溝正史の『獄門島』でした。そんなに良かったかと思い読み直してみましたが、「中の下」といった感じ。『犬神家の一族』の方がよほど面白い。犬神家は1985年版では100位にも入らず、2012年版では39位でした。85年の時は映画の印象が残っていて、選者は流行に反発したのでしょう。2012年ではそれが薄れたのでランクインしたと思われます。
これだけ前振りしたのは、その『犬神家の一族』も諏訪が舞台になっているからです。作中、那須湖とあるのは諏訪湖、上那須町、下那須町とあるのは、上諏訪、下諏訪のことです。犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛は生糸で財を成したとされています。これは製糸業で日本最大の工場を持つに至った岡谷の片倉財閥に想を得たとされています。作中、諏訪湖の「七つ釜」にもふれられており、それが推理に一役かっています。
・・・諏訪湖からこんなふうに足がニョッキリ生えていたら腰ぬかしますね・・・
映画『犬神家の一族』に出てくる湖は諏訪湖ほど大きい感じはありません。映画では青木湖を使っています。青沼静馬は足をV字型にして湖に沈められていました。諏訪湖は広さに比して意外に浅いのですが(深いところでも水深7m)、それでも逆さにして足が出るほど浅くはありません。ただ、当時は諏訪湖は今ほど整備されていませんでしたので、横溝には遠浅のイメージがあったのかもしれません。街並みは上田市でロケされました。
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