2012.08.17 [ 【第六感】 ]
「庚申(こうしん)塔」ってなに?
古くからの集落や街道筋、道の分岐点などには石碑や石塔、あるいは石仏が建てられています。何気なく通り過ぎてしまいますが、それぞれには建てられたときの意味や建てた人々の思いがあるのです。よく目にする石碑には「庚申」という文字が刻まれているものがありますが、この石碑の意味するものは何だろうかと考えたことはありませんか。
また、道祖神や「二十三夜塔」と刻まれた石碑も多く建てられており、石仏としては地蔵のほか、馬頭観音像が目に付きます。これらの石碑や石塔、石仏は小さく素朴なものや大きく立派なものもありますが、人々の思いや信仰、そして、その質感と古びたたたずまいがその周りの風景に溶け込んでなんともいえない雰囲気を醸し出しています。
石碑などの建てられた意味を知ることで人々の思いにこころを馳せてみてはどうでしょうか。
諏訪市中洲地区の旧街道筋をちょっと回ってみるといくつもの石碑、石塔がありました。「庚申塔」の建てられた年は最近のもので昭和55年と刻まれています。これには理由があります。
◇庚申塔(こうしんとう)とは
庚申塔(こうしんとう)は、庚申塚(こうしんづか)ともいい、中国より伝来した道教に由来する庚申信仰に基づいて建てられた石碑、石塔のことで、単に「庚申」と刻まれたものや「庚申搭」と刻んだもの、あるいは金剛像が刻まれたものなどさまざまなものがあります。
庚申の年(最近では昭和55年)や庚申講(こうしんこう)を3年18回続けた記念に建立されることが多といわれています。
庚申講とは、庚申の日に人間の体内にいるという三尸(さんしの)の虫(むし)という虫が寝ている間に天帝(てんてい)※にその人間の悪事を報告しに行くのを防ぐため、庚申の日(60日に1回まわってくる日)に夜通し眠らないで天帝や猿田彦(さるたひこ)や青面金剛(せいめんこんごう)※を祀って宴会などをする風習です。
庚申塔の石形や彫られる神像、文字などはさまざまですが、「申」は干支(えと)で猿に例えられるため、「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿を彫り、村の名前や庚申講員の氏名を記したものが多くあります。 同様の理由で庚申の祭神が神道では猿田彦神(さるたひこのかみ)とされ、猿田彦神が彫られることもあります。また、仏教では、庚申の本尊は青面金剛とされるため、青面金剛が彫られることもあります。
※天帝はこの世の全ての者を監視し、裁判を行う。天帝を信じ、善行を行う者は天恵を与え、天帝を背徳し悪行を行う者は天罰を与える。それらは寿命にも影響を及ぼす。
※青面金剛は、インド由来の仏教尊像ではなく、中国の道教思想に由来し、日本の民間信仰の中で独自に発展した尊像である。庚申講の本尊として知られ、三尸を押さえる神とされる。
◇そもそも「庚申(こうしん)」とは
庚申(こうしん)とは「かのえさる」のことで干支(えと)の一つで、カレンダーによく書いてあるものです。
庚申は干支の組み合わせの57番目にでてきます。陰陽五行(いんようごぎょう)では、十干(じゅっかん)の「庚」は陽の金、十二支(じゅうにし)の「申」は陽の金で、比和(ひわ)※となります。
※比和:同じ気が重なると、その気は盛んになる。その結果が良い場合にはますます良く、悪い場合にはますます悪くなるという「五行思想」
陰陽五行思想(いんようごぎょうしそう)※とは、中国の春秋戦国時代ごろに発生した陰陽思想と五行思想が結び付いて生まれた思想のことです。陰陽思想と五行思想との組み合わせによって、より複雑な事象の説明がなされるようになりました。
※五行(ごぎょう)思想(しそう)または五行説(ごぎょうせつ)とは、古代中国に端を発する自然哲学の思想で、万物は木・火・土・金・水の5種類の元素からなるという説である。また、5種類の元素は『互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する』という考えが根底に存在する。
陰陽五行説の基本は、木、火、土、金、水、(もく、か、ど、こん、すい、金は「きん」でなく「こん」と読ませます。)の五行にそれぞれ陰陽二つずつ配します。甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸、は音読みでは、こう、おつ、へい、てい、ぼ、き、こう、しん、じん、き、と読みます。音読みでは陰陽と五行にどう対応しているか分かりにくいですが、訓読みにすると、きのえ、きのと、ひのえ、ひのと、つちのえ、つちのと、かのえ、かのと、みずのえ、みずのと、となり、五行が明解になります。かのえ、かのと、は金。陰陽は語尾の「え」が陽、「と」が陰です。語源は「え」は兄、「と」は弟です。「えと」の呼び名はここに由来します。「えと」は本来、十干ないし干支の呼称でした。きのえ、は「木の陽」という意味す。
01甲子(きのえね)02乙丑(きのとうし)03丙寅(ひのえとら)04丁卯(ひのとう)~ 57庚申(かのえさる:昭和55年)58辛酉(かのととり)59壬戌(みずのえいぬ)60癸亥(みずのとい)の60種類
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