繁みを回りこむ右カーブを過ぎたところで、
ようやく師匠に追いつきました。
すると師匠は私を見るなり
「繁みの向こうに動物がいるので、歌いましょう」
と言ったのです。
そこでよく山で歌う楽しげな歌を二部合唱しながら、
ゆっくりと歩き出しました。
しばらくしてから
師匠が振り向いて言いました。
「さっきの繁みの所に
何が居たか分かりますか?」
「野犬じゃないんですか?」
「いいえ、あれは熊だったんですよ!」
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師匠によると、
曲がり角を曲がった途端、
熊がすぐ近くで猛烈に大きな声で
「ウォ~ッ!」と吠えたのだそうです。
「あ、熊だ」と思った師匠は
目を凝らして繁みをじっと見ましたが、
葉が生い茂っているのでよく見えません。
そのうち熊は、
「ウ~~~」と不気味なうなり声を上げて
更に威嚇し始めたので
「今、動いてはいけない。ここであの子を待たなくては」
と直感的に思った師匠は、
じっと立って繁みを眺めていたのだそうです。
何事も無かったかのように静かにたたずんでいる師匠を見て
熊は気持ちが落ち着いてきたのか、
しばらくするとうなるのをやめてしまいました。
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